【建設×5G】大成建設「T-iROBOシリーズ」×ソフトバンク「おでかけ5G」で建機の自律制御に弾み | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

公式ブログ

【建設×5G】大成建設「T-iROBOシリーズ」×ソフトバンク「おでかけ5G」で建機の自律制御に弾み

 ゼネコン各社が、その活用に熱い視線を送る5G(第5世代移動通信システム)。画像データや操作のための制御信号といった大量の“情報通信”を必要とする建設機械の遠隔操作へ、ゼネコン各社の「建設×5G」の動きが活発化の様相を呈す。建設現場における省人化・効率化をターゲットに「自律制御」に取り組む大成建設は、5Gの活用に大きな可能性を見い出す。

送受信装置を搭載したバックホウとクローラーダンプによる実証実験

 大成建設は、ソフトバンクが提供する可搬型の5G設備「おでかけ5G」を建設現場として初めて活用。同社が開発を進めている遠隔操作と自動制御が可能な建設機械システム「T-iROBOシリーズ」との連携に成功した。
 三重県東員町の実験フィールドにソフトバンクの「おでかけ5G」を設置。現場に局地的な“5G環境”をつくり出しながら、検証用の端末(送受信装置)を搭載したバックホウ(土砂掘削・積み上げ)とクローラーダンプ(運搬・排土)による実証を行った結果、焦点となっていた実際の稼働と映像のタイムラグ(遅延)が4Gを活用した場合との比較で10分の1以下にまで低減できたという。
 5Gという新たな通信手段(モバイルネットワーク)を用いることで、課題とされてきた通信速度・容量の不足に伴うタイムラグ(遅延)や通信範囲が限定されてしまうといったWi-Fiや特定小電力など無線による通信システムの弱点を解消。大容量かつ高精細な映像と制御データをスムーズに処理する“安定した通信制御”の実現によって、同社が力を入れる「自律制御」に弾みをつけた。
 実際に大成建設・技術センター生産技術開発部スマート技術開発室メカトロニクスチームの青木浩章チームリーダーが「実証の最大のポイントは通信の安定性をいかに確保できるかだった」と話すように、5Gの活用によって、無線による通信システムの課題を一手に解消した価値は高い。

左から名合室長、青木チームリーダー、土木本部の金浩昭機械部部長

 特に「建設機械の遠隔操作や自律制御は、災害復旧など2次災害の危険性もはらむような現場にとって非常に有効な手段になる」だけに、現場の操作室だけでなく、現場から約280㎞も離れた技術センター(横浜市)からの“超遠隔”による制御が実証された点も大きい。
 遠隔地であっても“安定した通信制御”が可能であることを実証したことで「例えば、日本全国のどこに現場があったとしても、東京にある本社や横浜市にある技術センターから現場を支援することができる」からだ。
 通信制御の安定性は、生産性の向上を目的に国策としての推進が求められるi-Constructionにとっても重要な要素技術の1つ。「5Gを活用した安定した通信制御は、その答えになるのではないか」と話す。
 政府が打ち出す『Society5.0』の実現へ、5Gを活用した今後の展開にも注目が集まる。
 名合牧人技術センタースマート技術開発室長は「CPS(サイバー・フィジカル・システムズ)の概念を建設現場における技術開発に組み込んでいけるのではないか。建設産業に、いわゆるデジタルツインをつくり出すことができれば、建設現場における一層の安全管理、施工管理に役立つ」と前を向く。
 「その概念はいわば現実空間の事象やデータをサイバー空間で分析・知識化して、現実空間にフィードバックする仕組み。5Gを活用すれば、建設機械の制御情報やセンサーから得られる計測情報、画像や位置情報など現実空間の事象やデータをサイバー空間にリアルタイムで再現することができる」(同)とも。
 「サイバー空間で分析・形式知化された情報に基づき、これまで“経験”や“勘”に頼っていた作業の効率化・最適化を図れば、現場での無理・無駄の解消や施工方法の改善につなげることができる。省力化・省人化や働き方改革の推進に役立つ」と、5Gの活用メリットを説く。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら