6人の建築家と6人の著名人による建築の本質と未来を語るトークイベント「『まち・もの・ひと』の2020を超えて」が、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで3日間にわたって開かれ、大勢の市民らでにぎわった。実行委員長で建築史家の倉方俊輔氏は「建築がより身近で社会からリスペクトされる存在であってほしいと思い企画した。東京から未来を垣間見たい」と趣旨を話した。
初日に登場したのは建築家・美術史家の山名善之氏と脳科学者の茂木健一郎氏。山名氏は、文化遺産としてのモダニズム建築について、ル・コルビュジエの建築群の世界遺産登録を事例に解説。登録に苦労したのは、コルビュジエ建築のすばらしさを享受するコミュニティーの欠如だったなどと指摘した。茂木氏は「建築家の理想が現実的な形にならないことがあるのはどう考えたらいいのか」と、日本の著名建築家の作品を例に疑問を投げかけた。移築についても「サイトスペシフィックであるはずの建築が移築されることは疑問」などと述べた。
谷尻氏は「運営までも含めたモデル建築をつくって、クライアントに提案しているのがいまの仕事」と「社食堂」建築など現在の自身の活動を紹介した。大変な仕事をしているのに設計料が安いという声をよく聞くが、その働き方を変えたいと思っていると語った。
また、建築家の藤村龍至氏と漫画家・コラムニストの辛酸なめ子氏との対談で、辛酸氏は「20代のころ『建築知識』という雑誌で4コマ漫画を書かせていただいていたことが建築との出会いだと思う」と述べた。自身が旅行で撮影したインドや日本などの街並みについても独自の視点とユーモアを交えて解説した。藤村氏との対話を通して建築家の仕事のプロセスやいまの時代の仕事の仕方を知ることができたとも話した。
藤村氏は、「社会状況によって建築家に求められるものが変わってくる。いまはどちらかというと寄り添う建築になっているのではないか」と指摘した上で、建築家というのは「批判的最適化」を考えることが必要で「『こんな生活もある』という提案をしたい」と述べた。ほかに建築家の乾久美子氏と小説家の平野啓一郎氏、建築家の大西麻貴氏と写真家のホンマタカシ氏、建築家の永山祐子氏とアーティストの清川あさみ氏が対談した。