【水害対策】アムニモが簡易無線水位計測サービスを開発 低価格で水位の遠隔監視を実現 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【水害対策】アムニモが簡易無線水位計測サービスを開発 低価格で水位の遠隔監視を実現

 アムニモ(東京都武蔵野市)は、河川や下水道工事の水害対策となる『簡易無線水位計測サービス』を開発し、申し込み受付を開始した。センサーで取得した水位計測データをクラウドに上げ、パソコンやスマートフォンを通じて遠隔監視するシステムとなる。無線水位計、データー通信、クラウドの3つをパッケージにし、サブスクリプション方式で提供する。遠隔監視の高額な初期投資を不要にし、天候に左右されやすい工事でも必要な時だけ迅速に対応できるようにすることで、大幅な効率化と働き方改革を支援する。

 アムニモは、計測機器メーカーの横河電機の新規事業として100%出資により発足した企業であり、産業向けIoT(モノのインターネット)サービスを提供している。今回、建設現場用の水位計測データを取得するデバイスを開発し、基本サービスと組み合わせることで工事用ICT水位計測サービスが実現した。現地まで水位計を確認しに行き、メジャーなどで計測する手間や時間を減らすのが目的だ。大規模な河川だけでなく、小さなため池から河川、下水道などの工事現場まで幅広く対応できる。

 計測器には、横河電機が独自開発した高確度圧力センサーであるシリコン振動式センサーを搭載した。高精度(プラスマイナス10mm)かつ長期安定計測を実現し、メンテナンス頻度も低減した。プラント分野で培った計測技術をベースに、建設現場に不必要な機能は削除するなどコストと機能を最適化したセンサーとなる。ケーブルは5m、10m、15m、30mの4種類あり、センサーを水中に投げ込むだけで計測準備が完了し、電源スイッチを入れるだけですぐにデータを遠隔地のパソコンやスマートフォンで閲覧できる。

 さらに、バッテリー内蔵型の電池駆動にすることで電源工事を不要にしたのも特徴だ。開発を担当したアムニモの新井崇氏は「工事現場は電気がとれない場所も多く、通常の水位計では電源工事が必要になる。工事が不要なソーラーパネルで発電する場合も設置場所を制限されることが多い。これらの課題を解決するため電池駆動式を開発した」と説明する。内蔵バッテリーは1年継続して駆動するため、単年度の現場では一度も取り替えることなく使用できる。

内蔵バッテリーは1年連続で駆動する


 計測データは携帯電話網を使用してクラウドに送信するため、広範囲な無線エリアで利用できる。取得したデータから水位計の位置を地図上に表示し、水位の変位をグラフ化するなど分かりやすいビジュアルで画面に表現する。

水位計の位置を地図上に表示し、変位をグラフ化


 また、水位計の監視モードは、任意のしきい値を境に「通常時」と「非常時」に自動的に切り替わる。「通常時」は通信費や電力を抑えるため、20分おきにデータをクラウドに送信するが、降雨などで水位がしきい値を超えると警戒モードに自動的に切り替わり、関係者にアラートを送信するとともに、1分おきにデータを送信し、小刻みに更新していく。そのため、遠隔地にいても現地の状況を細かく把握できるようになる。

 サービスの提供にはサブスクリプション方式を採用したことで、水位計の利用、携帯電話回線の通信契約、クラウド開発費をパッケージにして月額3万円からの料金で利用できるようにし、従来に比べて導入のハードルを大幅に低くした。これまでは無線水位計の購入費やクラウド開発費、工事費などを合計すると400万円もの高額な初期費用がかかり、さらに毎月のハード・ソフトの維持費が必要になっていたが、支払いの負担を軽減することで、利用しやすいサービスになった。

 新井氏は「高額な遠隔監視サービスを中小規模の現場で使うには敷居が高く、導入しづらい技術だった。低コストで便利なサービスを実現することで小規模工事でも気軽に利用でき、安全な施工の確保に貢献できる」とメリットをあげる。工事現場の活用に加え、ため池などでも効果を発揮する。西日本豪雨で被災した広島県の小規模なため池の水位計測にも試験導入されており、今後の大規模水害における水位監視に貢献することが期待されている。

 さらに工場の水害予防、地下街や地下鉄の防災や事前対策など幅広いシーンで利用することも想定される。周辺地域への安全管理が課題となる小規模な河川や水路の工事での一時的な利用でも利用が可能だ。サービスの問い合わせや申込みは、同社の特設ホームページ(https://amnimo.com/wlm/)で受け付けている。

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