【活力とゆとりのある東京へ】都が目指す"40年代都市" マスタープランの素案がついに公表 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【活力とゆとりのある東京へ】都が目指す”40年代都市” マスタープランの素案がついに公表

 2040年代に向けて東京都が目指すべき都市の姿を実現させるための大きな道筋となる都市計画区域の整備、開発と保全の方針(マスタープラン)の素案が公表された。東京の都市づくりは、17年の「都市づくりのグランドデザイン(GD)」や19年の「未来の東京戦略ビジョン」で示された都市像に基づき、活力とゆとりのある高度成熟都市の実現を目標に掲げている。マスタープランでは、都心部の住宅政策や水害対策など、GD策定後の社会環境の変化とそれに伴う課題に対応するため、必要となる都市機能の誘導の方向性を示している。

 広域レベルの都市構造について、これまで都は、環状メガロポリス構造を提唱して都市づくりを推進してきた。現在では、おおむね首都高速中央環状線の内側に位置するセンター・コアを中心に都市機能が集積し、交通軸となる三環状道路の整備や羽田空港の機能強化などが進み拡大が続いている。

 グランドデザインでは、この構造をさらに発展させ、都内各地の個性に着目した拠点形成や地域づくりを推進する考えが打ち出された。都市機能の集積や地域特性、インフラの整備状況などを踏まえ「中枢広域拠点域」「多摩広域拠点域」など4つの地域区分と「国際ビジネス交流ゾーン」「多摩イノベーション交流ゾーン」の2つのゾーンを示した。

中枢広域拠点図


 これを大枠として、都心部では大規模な開発事業、多摩地域での交通ネットワーク形成などが進展し、地元自治体によるまちづくりの機運も高まっている。加えて19年は台風による風水害が、島しょ地域も含めた都内全域に被害を与え対策の必要性を改めて認識させた。マスタープランでは、こうした最新の状況を踏まえ、各自治体や個別の再開発事業の大きな方向性を指し示す。

◆主要駅に機能集積/都心は量から質へ
 おおむね環状第7号線の内側にあたる中枢広域拠点域では、利用客が多い主要駅を中心に機能を集積して、芸術・文化・スポーツなど多様な個性を持った各地の拠点を鉄道や道路ネットワークで接続。相乗的に東京全体の魅力を向上させる。
 これまでに東京や渋谷、池袋などの主要駅で大規模な開発プロジェクトが進んでいる。鉄道では、開発が進む臨海部と都心を結ぶ地下鉄8号線の延伸や、品川の広域交通強化につながる品川地下鉄構想などが位置付けられた。
 より都心部に限られるセンターコアエリアでは、住宅供給の方針を転換する。都心居住を促すために実施している容積率の割り増しなど、量的政策が一定の成果を上げたことを踏まえ、今後は、高齢化や国際化に対応した質の強化にかじを切る。高齢者や外国人のニーズなど多様なライフスタイルに対応した住宅の整備を誘導していく方針だ。

◆水害に備え高所避難施設を誘導
 防災面では、近年の豪雨や台風による水害への備えを強化する。都内東部の低地帯を念頭に、緊急避難用のビルや建設発生土を活用した高台の整備、平時も利用可能で災害時に避難場所に活用できる施設の整備など、浸水時に高所へ逃れる垂直避難のための施設を積極的に誘導する「高台まちづくり」の考え方を導入した。

 高台まちづくりは、国と都が1月に設置した東京の防災まちづくりに関する連絡会議の中で水害対策の一環として位置付けられ、効果的な施策が議論されている。

 都市環境では、活発な民間の大規模開発で創出された緑化空間と都市公園をPark-PFI(公募設置管理制度)による一体的な管理を促進する。このほか、都市計画の地域地区で緑化地域の指定などを行い、建て替えに合わせて積極的な緑化を進める。

高台まちづくりの推進イメージ

◆幹線道路に業務施設/流通拠点も機能更新
 多摩方面では、リニア中央新幹線の駅へのアクセス道路の整備や、多摩都市モノレール延伸の事業化に向けた取り組みが進むなど、利便性の大きな向上が期待されている。

 リニア駅へのアクセス道路として南多摩尾根幹線の整備が加速化している。八王子市南大沢周辺などでは、大学を始め企業や研究機関などの集積が進むなど、さらなる企業の進出なども期待されることから、幹線沿道へのオフィス立地を誘導する考えだ。

 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)のIC周辺には、広域物流拠点となる西南流通業務団地がある。インターネットの普及に合わせた施設機能の複合化などを進めるため、都は機能を制限している都市計画の施設区分を統合し、機能の多様化に対応する方針だ。

 このほか、主要駅周辺や商店街、団地といった身近な中心地では、生活に必要な機能を集積させ、その徒歩圏に住宅市街地を誘導。歩いて暮らすことができるまちへ再構成する。その一方で、中心地から離れた地域では、長期的な観点から新たな宅地化を抑制し、公園や緑地、農地などが広がるみどり豊かな良質な環境を保全・形成する。

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