【木材活用社会を目指し新会社】三菱地所ら7社 鹿児島県霧島市に「MEC Industry」設立 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【木材活用社会を目指し新会社】三菱地所ら7社 鹿児島県霧島市に「MEC Industry」設立

 三菱地所、竹中工務店、大豊建設、松尾建設、南国殖産、ケンテック、山佐木材の7社は、木を活用する社会の実現を目的とした新会社「MEC Industry」(メック・インダストリー、鹿児島県霧島市、森下喜隆社長)を設立した。ディベロッパー、建設、製材など木材にさまざまな形で携わる7社が出資し、建築用木材の生産から流通、施工、販売まで統合したビジネスモデルを構築し、低コストでユーザーニーズに合致した高品質な商品を供給する。将来的には高層建築での木材活用も視野に入れ事業を展開していく。

 木材を取り巻く既存のビジネスフローでは、川上から川下まで商品の製造段階ごとに個々の事業体が売買を繰り返しており、その都度中間コストが発生している。さらに、各プロセスの分断によりエンドユーザーのニーズを製造の現場に届けることが困難となっている。

 そこで同社は、市場ニーズから逆算した必要最低限の機能を統合し、プロセスマネジメントによる全体最適化とグループバリューチェーンを組み合わせることで、中間コストの削減を可能とし、商品開発と製造が連動することで無駄を省いた効率的な製造システムを構築した。

 木材を製造する建材事業者と木材を使用する建設事業者が提携した先行事例としては、熊谷組と住友林業が代表的だ。森下社長は「まだまだ研究・検討の余地がある可能性の広いテーマであり、同じような考え方をする企業は今後も出てくるだろう」と述べ、木材活用に向けた業界の活性化に期待を示す。

森下社長


 こうしたビジネスモデル革新により、既存事業が抱えていた課題を解決し商品の低コスト化を図るとともに、将来的に目指すのは、経済的かつ実用的な資材開発による中高層建築や大規模建築物での木材利用の実現だ。

 高層建築物の木質化に際して、障害となっているのが法律による各種規制だ。高層建築物で木材を使用するために必要な耐火性能を満たすにはコストが増大し、経済的な合理性を見いだせず、使用できなかった事例は数多あるという。MEC Industryの伊藤康敬副社長は「国土交通省を中心に規制の見直しは進められているが、抜本的な見直しが実現するめどはまだ立っていない」と現状を説明し、抜本的な規制見直しを前倒しで実現する大きな流れをつくる必要性を訴え、同社がその旗振り役を担う姿勢を示す。

伊藤副社長


 伊藤副社長は「当社は木造建築におけるあらゆる業種・業界の7社の出資によりできた会社だ。この7社の英知を集めてユーザーの需要とその解決策までを一気通貫の事業モデルで用意し、規制緩和の主体である国交省などに示していく以上に有効な手段はないと確信している」と語る。

 同社が今後展開していく具体的な事業としては、RC・S造で使用される建材の一部を木に置き換えることを可能にする建材を開発・供給する「新建材事業」と、CLT(直交集成板)パネルや集成材を使ったプレハブ化による高品質・ローコストな規格型の商品を開発・供給する「木(もく)プレファブリック事業」が柱となっている。

 新建材事業では2021年4月に三菱地所とケンテックが大豊建設の協力のもと開発した「(仮称)配筋付型枠材」の発売を予定している。製材木板に鉄筋を設置したコンクリート打設用の型枠で、型枠材をそのまま内装の仕上げ材として利用できるため、デザイン性の向上や施工負担の軽減に貢献する。

新建材事業では型枠材をそのまま内装の仕上げ材として利用できる「(仮称)配筋付型枠材」を開発


 木プレファブリック事業では、プレハブ化による施工手間や工期の削減によって、100㎡の戸建て平屋を1000万円未満で供給可能としている。

 これらの事業により、木造建築資材を「少品種大量生産」の工業製品化し、現場の施工方法も簡素化することで総合的な事業コストを削減し、いまできる低層建築物で足場を固めつつ、高層建築物での規制緩和を訴え続けていく姿勢だ。

プレハブ化によって100㎡の戸建て平屋を1000万円未満の価格で供給可能

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