【電子黒板】写真撮影・台帳作成の負担軽減! ボトムアップ型の改善ツール「BB工事くん」 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【電子黒板】写真撮影・台帳作成の負担軽減! ボトムアップ型の改善ツール「BB工事くん」

電子黒板「BB工事くん」


 建設現場の魅力向上へ、労務改善・生産改革が喫緊の課題になる中、日々の業務で欠かすことのできない工事写真の撮影や台帳作成が大きな負担になっている。それらの作業時間を飛躍的に短縮するツールとして注目を集めるのが「電子黒板」だ。ビッグブラザーズシステム(東京都渋谷区)が提供する電子黒板『BB工事くん』は、建物仕上げ・リニューアル工事のエーアールエー(川崎市)の協力のもとに開発し、工事写真に伴う作業の大部分をiPad1台のみで完結させる機能を備える。ビッグブラザーズシステムの田島健太営業部部長とエーアールエーの新井正徳社長に、従来に比べて大幅な作業時間の短縮を実現した“現場発”の電子黒板の開発経緯や特徴を聞いた。

--開発の経緯は
 田島 そもそも当社は、UAV(無人航空機)を使用したスマートフォンアプリの開発で、現場改善に取り組むエーアールエーさまの技術支援を担当していました。その中で残業などの長時間労働の要因となっている工事写真の撮影や台帳管理の作業時間が課題として浮上し、当社が得意とするスマートフォンやタブレットのシステム開発の技術で業務改善に貢献できないかを検討することにしました。2016年8月から電子黒板の開発を本格化し、17年2月発売に至りました。

◆“困りごと”から誕生
 開発では新井社長に全面協力してもらいました。現場の課題や改善点などの“困りごと”を抽出していただき、豊富な実務経験に照らし合わせることで、それらの問題を解決する電子黒板として誕生したのが『BB工事くん』です。単にコンピューターのシステム会社が作った製品ではなく、現場の生の声を聞きながら開発した“ボトムアップ型”の業務改善ツールになっているのが大きな特徴だと考えています。
 新井 当社は専門工事会社として建物の内外装仕上げやマンション修繕工事などを手掛けています。われわれの現場代理人や職長は平均して1日に約20枚の工事写真を撮影し、台帳を作成しています。現場ではチョークで工事情報を黒板に記入し、デジタルカメラで施工場所を撮影した後、事務所に戻ってからパソコンにデータを落として台帳を作成します。紙ベースで管理する現場も多く、膨大な量の写真管理は担当者の大きな負担になっているのですが、それが見過ごされ、ごく当たり前のものとして行われているのが実情です。
 現場では毎日さまざまな業務が遂行され、工程管理や労務管理に追われます。それと並行して工事写真を管理するため、台帳の整理は後回しになりがちです。台帳の作業を貯め込んでしまうと、いつどこで撮影した写真かわからなくなり、まずは思い出すところから始めなければなりません。こうした「しわ寄せ」が間違いなどの手戻りになりトラブルにつながります。そのため、撮り忘れた写真はないか、いつも不安を持ちながら作業していました。こうした非効率が電子黒板により改善されることを期待しました。
 建設業界全体としても週休2日制などによる“働き方改革”が議論されており、就業環境を改善する上で書類整理などの時間を短縮することは業務改善に大きく貢献するものと考えます。

iPadで撮影した後、電子黒板情報を重ねて工事写真を作成する

 田島 開発で心掛けたのは、ユーザーにとっていかに「使いやすいものにするか」ということです。建設業界ではIT関連の導入が遅れているとの話を聞き、決められたとおりにボタンを押していけば電子黒板を扱えるよう「シンプルな操作性」を目指しました。持ち運びや画面の見やすさからタブレット端末を採用し、セキュリティーなどを考慮してiPadを選びました。

--操作や機能面の特徴はどのようなものですか
 田島 「BB工事くん」 は、工事名・工種・測点などをその場で選択し、iPadで撮影した現場の写真と黒板を重ねて工事台帳を作成します。撮影した写真データは、工事名・工種・測点ごとのフォルダに振り分けられており、整理されているため、事務所に戻ってから作業をする必要はありません。黒板に手書きしていた情報が電子化されるため誤字脱字も防ぎやすくなりました。作成した台帳はメールで簡単に送信できます。

◆“PC作業から離れる
 一番のポイントは、写真データをパソコンに落とし込む工程を省いたことです。「パソコンからなるべく離れる」ことも開発のコンセプトであり、撮影・台帳管理にかかわる大部分の作業をiPadで完結するようにしました。事務所でのパソコン作業が減少することで、必然的に残業時間が抑制されるものと考えます。

打ち合わせがiPad1台で済み工事確認も円滑化できる

 新井 これまでの工事写真の撮影は、施工場所によっては黒板を無理矢理映し込んで撮影したり、狭い場所で黒板を持ち歩くなど大変な作業でした。黒板を持ってもらう必要もあり2人以上で撮影するのがほとんどです。『BB工事くん』は黒板を電子情報で扱うため、基本的に“これ1台”で作業が完結します。実質的に1人いればよく、そのほかの人は別の作業を進めることができるため、省人化に大きく貢献します。

--実際に使ってみた実感は
 新井 開発された『BB工事くん』を使ってみたら、非常にシンプルな操作性に感心しました。タブレット1台あれば作業の9割を行うことができるため、工事黒板に伴う作業時間は半減したと実感します。
 やはり、撮影した写真をすぐ台帳に整理できる機能が有効だと感じました。写真を撮り忘れると場合によっては工事をやり直すことにもつながります。『BB工事くん』があれば、どこにいてもすぐに撮影した工事写真を確認できるため、安心することができます。

◆“頭の中もきれいに整理
 『BB工事くん』を導入したことによる副次的な効果としては、常に工事写真が台帳に整理された状態で工事を進めるため、これまでに自分が完了させた作業と次に行う作業が頭の中でもきちんと整理された状態になることが大きいです。その結果、次に取り組む作業に集中することができ、工事の生産性に良い影響を与えてくれています。
 もちろんiPadの機能を使うこともできます。例えば動画機能が現場で役立っています。作業確認や安全教育の動画を作成すれば、技術指導や新規入場者教育などに活用できます。業務の引き継ぎでも動画を使うと効果は大きいと感じます。

パソコンにつないで作業することもできる

 田島 台帳整理のためだけにパソコンを用意する必要がないのも特徴といえるでしょう。もちろん印刷などにパソコンは必要ですが、基本的には社内や現場事務所にパソコンが1台もあれば十分といえます。内勤の方が写真整理などの作業を代行することも可能です。遠隔地にある現場でも『BB工事くん』が1台あれば、ほとんどの作業が完結するため、わざわざパソコンを持ち込むことはありません。

--今後の展開について教えてください
 田島 「誰でも使える」をコンセプトに開発した電子黒板になるため、元請企業だけでなく、専門工事や、改修工事などの小さな現場を手掛ける企業にも有効だと考えています。まずは手に取ってもらえるよう、販売価格も『BB工事くんアプリ』とiPadがセットで8万9800円(税別)と10万円を切る手頃な価格に設定しました。
 2月の発売以降、マニュアルをタブレットに組み込んだり、写真の振り分け画面を改善するなど改良を重ねています。国土交通省も2月から電子黒板の導入を認可しているため、今後は国交省の運用方針やセキュリティー基準に対応することを検討していきます。
 こうした公共工事の電子納品にも対応することで『BB工事くん』の利便性をさらに高めていき、建設現場の業務改善・生産性向上に貢献していきたいと考えています。

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