【寿建設】地域建設産業・喜ばせる技術 選ばれる企業へ 画期的な手法で建設業の魅力を発信 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【寿建設】地域建設産業・喜ばせる技術 選ばれる企業へ 画期的な手法で建設業の魅力を発信

 トンネル専門工事とトンネル主体の構造物補修、一般土木工事などを手掛ける寿建設(福島市)の森崎英五朗社長は、現場発のアイデアの商品化や、さまざまな媒体を活用した建設産業の社会的PRなどに積極的に取り組み、注目を集めている。社業に止まらず業界全体に目を向けた活動の根源には「現代の“黒部の太陽”を見つけたい」という強い思いがある。

森崎 英五朗 社長

 同社は、大正から昭和にかけて全国のトンネル工事で活躍した豊後土木(ぶんごどっこ)の流れを汲む祖父の森崎鼎が1957年に「森崎工務所」として創設。以来、黒部川第四発電所など各地の難工事に従事し“トンネル屋”として名を馳せた。66年に福島県と山形県を結ぶ国道13号東栗子トンネルの仕事が完成したのを機に、当時入社した2代目の父・俊紘が東北を拠点に仕事を展開しようと決意し、福島市内に寿建設を設立した。
 その後も全国のトンネル工事に携わる一方、一般土木工事にも事業を拡張し地元ゼネコンとして地域の元請工事の実績を積んだ結果、近年は福島県発注のトンネルを直接受注し施工できるようになった。さらに蓄積した技術と豊富な経験を基に、トンネル内の画期的な漏水対策『点導水工法』を開発するなど、独自技術を生かしてリニューアル分野にも参入している。
 2006年に3代目社長に就いた英五朗氏は、社是『職場是命 工人是宝』のもと、会社経営に当たってはインターネットを活用した社内情報の共有を重視。自ら「言葉に固執するタイプ」と語るように、毎年1つ年間キーワードを設定し、全社でそれに沿った取り組みを推進している。
 建設投資が落ち込み、安値受注が横行していた10年には『+1』というキーワードを掲げた。「技術に立脚した付加価値の創造」という命題を社員に投げ掛けつつ、現在の経営理念の『喜ばせる技術、選ばれる企業』の意識を再徹底させた。震災後も自社技術が生かせる工事への参画に重きを置き、限りある人的資源を本業に集中させる「地に足を付けた経営」を貫き、今も安定した売り上げを継続している。
 また、14年には『改善』をテーマに、形骸化していた社内の「私の改善提案一制度」を再生。「自ら良くなるだけではなく、社会的に善くする」ための提案を求めたところ約150件ものアイデアが寄せられたという。こうした取り組みの中からハツリ作業時の飛散を防止する『ハツリ・ガード』や、トンネル工事の鉄筋結束作業を省人化する『鉄筋ハンガー』など“現場発”のアイデアを商品化。社員の思いや現場の取り組みに日の目を当て、個々の参加・改善意欲を促している。

足の開き幅にまで配慮し、作業の安全性が 飛躍的に向上した「ハツリ・ガード」

 会社経営の一方、建設業の担い手不足を嘆く声には「まずは建設業の魅力ややりがいを知ってもらうこと。情報があっても伝わらなければ意味がない」と従来の広報のあり方に疑問を持ち、自らが先頭に立って画期的な手法で社会へのアピールを続けている。中でも国際的に活躍する写真家・山崎エリナ氏を起用したインフラメンテナンス写真展は全国的に大きな反響を呼び、各地で巡回展が開かれているほか、山崎氏に対して現場撮影や講演の依頼が殺到するなど、今も社会的ムーブメントを巻き起こしている。

山崎エリナ氏のインフラメンテナンス写真展 パネルに見入る来場者

 さらに、重機オペレーターの操作をゲーム感覚で体験できる『重機でGO』の発案や、トンネルの開通を記念したドローン撮影動画をSNS発信するなど、従来の形式にこだわらないアプローチの数々は記憶に新しい。
 こうした広報・普及活動の全てを「建設業界に人を引きつけるための手段」と位置付けて真摯に向き合いながら、持ち前のサービス精神から「面白さ」を追求しているという森崎社長が、その機知に富んだ発想と果敢な実行力で、かつて若者を建設業界に引き寄せた映画『黒部の太陽』のような“キラーコンテンツ”の創造に挑む。
 
 
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