【コイシ】地域建設産業・新ビジネスモデル 担い手確保など解決策提示 地域と連携した新サービスも | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【コイシ】地域建設産業・新ビジネスモデル 担い手確保など解決策提示 地域と連携した新サービスも

 土木測量会社のコイシ(大分市)は、経営規模は小さいながら、「丁張マン」「KOISHI-3D」など数多くのヒット製品を生み出してきた。また、在宅勤務を採用し、子育て中の女性を積極的に雇用するなど、建設業の喫緊の課題となっている担い手確保や働き方改革の1つの解決策を提示している。建設業の既成概念にとらわれない小原文男代表は、地域建設業と連携した新たなサービスの展開も構想しているようだ。

小原 文男代表


◆地域建設業に新ビジネスモデル提案/社内にキッズスペース設置

 1987年に、丁張り掛けの専門会社として前身の小原測量を創業。95年に現在のコイシに商号変更し、これまでに、測点名が書き込めるピンポイントマーカー「鋲ネクタイ」、電卓専用雨具「DoRoカッパ」、土木用計算機「丁張マン」などを開発してきた。シリーズ化した丁張マンは、センターや幅杭、控え杭、測点を容易に設置でき、丁張りの作業を劇的に変えた。
 一方、作業が容易になることで現場のミス増加が懸念された。視覚的にわかりやすい図面のあり方を模索する中、現場監督時代には「粘土で模型を作っていた」という小原代表は、3次元技術の導入にいち早く目を付けた。KOISHI-3D、KOISHI-Eye、設計照査・用地境界確認システムなどの開発につなげ、これらの技術は五ケ山ダム(福岡県)、大分川ダム(大分県)などの現場で活用される。2018年度には国土交通省のi-Construction大賞優秀賞を受賞した。
 現在は、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)として、北九州市立大学や九州工業大学などと連携し、3次元技術を活用した高度測量技術の研究開発を進めている。
 パソコンやGPS(全地球測位システム)、3Dレーザースキャナーなどが、時代の先端と見るやたとえ高価であっても迷わずに購入し、ビジネス化してきた。在宅勤務という働き方も、時代の先端を行く取り組みといえる。
 創業間もないころ、パートで採用した女性に、プログラム作成を軽い気持ちで頼んだところすべてを完璧にこなした。「特許も取り、経理もこなした。とにかく、すごい女性と出会った」という経験から能力には男女差がないことを改めて認識した。以降、女性を積極的に採用し、現在では従業員約60人のうち約半数が女性だ。

女性向けの社内CAD講座。業界未経験者でも安心して働けるサポート

 「子どもは母親が中心となって育てるもの。その母親に仕事を通して多くを学んでほしい」との思いから、子育て中の女性が働けるよう、フレックスタイム制を導入し、学校行事などに合わせて出勤日や勤務時間を決められるようにした。図面作成などの業務は在宅勤務を可能とし、毎朝の朝礼や仕事の打ち合わせはウェブ会議で行っている。
 また、子どもと一緒に出勤することもできる。社内にはキッズスペースを設け、子どもたちが遊び、宿題できる環境を整備した。「子どもが走り回っている職場はうちぐらい。癒しと活気がある」という。

社内に設置したキッズスペース。職場に癒やしと活気を生んでいる

 現在、小原代表は、「コイシ土木プラットホーム」を構想中だ。「地域電器屋を救ったアトム電器の『町の電器屋さんチェーン』の建設業版」と説明し、九州管内の零細の地域建設業を対象に、月額制で、コイシの技術資産や最安値での重機レンタル、研修受け入れの人材育成などのサービスを提供する。
 「地域の山・川・海は、地域の建設企業が土木で守っていく」ことを国土づくりと再定義し、環境省などと連携した、これまでのインフラ整備にとらわれない発想で地域建設業が土木を通して地域貢献していく。土砂流出の3Dシミュレーションの技術構築、安全に操縦できる「ミニ重機」の地域消防団への設置など、大災害時代に備えた具体的な連携策も進行中で、地域建設業の新たなビジネスモデルとして期待される。
 
 
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