【金杉建設】地域建設産業・i-Conのトップランナー 「3種の神器」で盤石の体制 良さを中小に広める | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【金杉建設】地域建設産業・i-Conのトップランナー 「3種の神器」で盤石の体制 良さを中小に広める

 埼玉県春日部市に本社を置く金杉建設(吉川一郎代表取締役)が、地域建設業におけるi-Constructionトップランナーの一角として走り続けている。けん引役を務める吉川祐介専務が「3種の神器」と呼ぶ3次元(3D)レーザースキャナー、ドローン、マルチビーム測深システムを始め、多種多様なツールを自社で保有。データの処理や解析業務なども内製化し、柔軟かつ迅速にi-Conに取り組める盤石の体制を築いた。いまでは国、県、市町村といった発注機関やICT活用の指定有無などを問わず、受注したすべての工事で i-Conツールの活用を模索、既に当たり前のものとして定着している。

上空75mから撮影できる大型ドローンを披露する吉川専務

 吉川専務が入社した2000年当時、1台70-80万円したパソコンを積極導入するなど「当社にはもともと、新しい設備に先行投資する企業風土があった」と振り返る。
 まだICT活用が情報化施工と呼ばれていた時代、09年には締固め管理システムを購入し、国土交通省の築堤工事に採用したのが同社の建設ITの始まりだった。高額な建設機械や設備はリース・レンタルが主流だが、「3回ほど使って元が取れるのであれば、リースではなく購入する」というのが基本方針だ。
 やがてi-Conが本格的にスタートし、15年度に同社初のICT施工を国交省の堤防工事で実施した。事務所長表彰を受賞するなど高い評価を得たものの、重機メーカーの全面的なサポートを受けていたため、自社の技術者に知識や経験を蓄積できないという課題が浮上した。利益面でも外注費がかさみ思うようなメリットは生み出せなかった。ドローン測量やデータ解析の専門会社が少なく、施工現場に「待ち」が生じるといった状況も踏まえ、同社はi-Conの内製化にかじを切り、体制整備を加速させた。
 ICT施工第2弾となった築堤工事は、第1回i-Con大賞で優秀賞に輝いた。この現場では自社保有のバックホウやブルドーザーに、MC・MG機器を後付けして施工に当たった。ここで3Dレーザースキャナーの購入にも踏み切り、出来形管理に活用した。購入先のメーカーベースでは、金杉建設が関東地方で初めての導入だったという。

3Dレーザースキャナー

 いまでは、上空75mの高さからでも管理要領に適合した写真を撮影できる高精度カメラ搭載の大型ドローン、事前の干渉検討や発注者との認識共有などに役立つVR(仮想現実)機器、3Dプリンター、標定点・検証点におくだけで自動かつ高精度な計測が可能なエアロボマーカーなど、さまざまなツールを所有。工事現場の環境や進捗状況などをみながら、好きな時に好きなだけ、適したツールを組み合わせて使う「ハイブリッドi-Con」も実践している。これも自社保有、内製化が成せるわざの1つだ。
 さらに、決断は台風19号の襲来前であったが、19年には、国土強靱化の流れの中で今後、河川浚渫や河道掘削などの工事が増えるとみて、ボート型の「マルチビーム測深システム」を購入した。同社は全国に先駆けて、ICT浚渫工に取り組んできた実績も持つ。

マルチビーム測深システム

 i-Con効果は採用面にも大いに波及した。ICTに関心を持つ学生からの応募が増え、法学部卒の技術系社員も誕生した。実現には至らなかったものの、遠く地球の裏側、コロンビアの大学生からインターンシップの問い合わせもあったという。
 金杉建設は、国交省が革新的技術の導入・活用を推進する通称PRISMプロジェクトにも参画。18年度は構成員だったが、19年度は中小3社連合の代表幹事社として「3D締固め管理システム」の開発に取り組んでいる。「国が新技術の活用に積極的な姿勢をみせている。研究開発にお金をかけられない中小企業こそ、PRISMにもっと積極的に参画すべき」と訴え、自らも3年連続の採択を狙う。
 「自社の取り組みは可能な限りオープンにしており、できるものはどんどんまねしてもらいたい。必要な助言も惜しまない。ICTの良さを特に中小ゼネコンに広めたい」と吉川専務。トップランナーとしてi-Con伝道師の役割も担いつつ、自らも「常にアンテナを張って情報を収集し、毎年新しいICT活用にチャレンジしたい」と歩みを止めない。
 
 
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