【金杉建設】ICTツールの自社保有+データ作成などの内製化 効率的な「ハイブリッドICT」目指す | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【金杉建設】ICTツールの自社保有+データ作成などの内製化 効率的な「ハイブリッドICT」目指す

 2017年度に創設された「i-Construction大賞」の第1回表彰で優秀賞を獲得するなど、地域建設業におけるi-Conトップランナーの一角として走り続ける金杉建設(埼玉県春日部市、吉川一郎代表取締役)が、経営戦略としてi-Con推進体制を整備・拡充させている。ICTツールの自社保有とデータ作成などの内製化にまい進、現場ごとに適したツールを組み合わせる「ハイブリッドICT」を標ぼう。河川、道路工事に続く領域拡大にも率先して取り組み、現在全国でもまだ事例の少ないICT河川浚渫工に挑戦している。
 2月上旬、松戸排水機場(千葉県松戸市)の水門と江戸川の間に当たる水域を、1艇のラジコンボートが軽快に航行していた。上部にGNSS(衛星測位システム)、船底部にマルチビーム(音響測深機)を備えたボートで、この日は水中の出来形を3次元(3D)で見える化する事後測量が行われていた。

マルチビーム搭載の測量ボート


 国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所から受注した「H29横須賀地区環境護岸整備工事」の一環で、水門前面エリアにたまった土砂の浚渫を実施。当初設計上の要求は、対象エリアで8000m3の土砂を取り除くこと。どこをどれだけ掘るという明確な計画はなく、手探りの状況だった。
 現場ではまず、起工測量として、マルチビームで掘削個所の深浅測量を行った。取得した3D点群データを基に、2Dの横断図、平面図を作成。それを3D設計データに変換し、マシンガイダンス(MG)バックホウの操作端末に入力するという手順をとった。バックホウの位置情報取得には、国土地理院の電子基準点情報を使って補正する「VRS方式」を採用した。

現地測量データ。赤色の個所に土砂が堆積している

MGバックホウによる土砂浚渫


 大島亮監理技術者は「3D化することで、どこに土砂が堆積しているかが一目瞭然になり、しっかりした掘削計画を作れた。また、オペレーター自身が、刃先の位置をリアルタイムに把握できるため、現場管理者としての仕事は非常に楽になった。翌日の作業個所の把握も容易だった」などとメリットを列挙する。
 金杉建設は、大小のドローン、3Dレーザースキャナー、GNSSローバー、自動追尾型トータルステーション、建機に搭載するセンサーやアンテナなどのi-Con機器・システム一式、3Dデータ用の各種ソフトウェア、さらにはVR(仮想現実)や3Dプリンターなど、多種多様なツールを自社保有している。
 吉川祐介専務は「それぞれの長所を生かした組み合わせで、より効率的なハイブリッドICTを実現する」と多種保有の狙いを明かす。3回ほど使うと元が取れるのであればリースではなく購入するという方針を掲げており、そこには「技術者自身が機械やソフトを扱うべき。外注では技術が身に着かない」との思いがある。外注ではクリティカルパスとなりうる測量関係業務などを自前で行うことで、工程管理上のリスクを減らせる。その都度手配してリースする必要がないため、部分的にでも迅速かつ臨機応変にICTツールを現場投入できるのは大きなメリットだ。

吉川専務(右)と大島監理技術者


 発注者指定や受注者希望といったモデル案件にかかわらず、従来型の中小規模の自治体工事などにも積極的にICTを活用する。側溝掘りなどに使うため、小型のマシンコントロール(MC)バックホウも購入した。「最近では工事を受注すると、まず、どこかにi-Conを使えないかとみんなで考えるようになった」
 今後は、社内i-Con推進室の人員を順次拡充していく方針だ。3Dデータ関連業務の内製化は、社内分業を可能にし、女性活躍の場の創出にもつながる。現場サイドの負担を軽減する本社の支援は、長時間労働の是正や休日確保といった働き方改革の礎となる。
 さらに「採用面への影響も顕著」で、4月にはドローンやCADに興味を持った法学部出身の新卒者が施工管理の部署に入る予定という。i-Con効果は建設現場以外にも波及してきた。

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