【働きかた】あらゆる技術の開発・活用で4週8閉所の実現へ! 大林組の取り組み | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【働きかた】あらゆる技術の開発・活用で4週8閉所の実現へ! 大林組の取り組み

汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を取り付けた油圧ショベル

 大林組は、すべての土木現場で4週8閉所の実現に向け、社内改革を進めている。取り組みは、同社土木本部本部長室が2016年2月に生産性向上チームを立ち上げスタートした。労働時間縮減は、労働関係法令の順守、担い手対策、建設業界の将来像といった面からも、業界が本気で取り組まなくてはならない課題だ。「書類作成からプレキャスト化・自動化施工まで含め、ソフト・ハードの両面から、あらゆる技術の開発・活用を進めていく」(鯉田昭雄本部長室部長)という。

◆土木32現場で試行
 同社は16年度に、現場職員と出向派遣を対象に4週8休を土木32現場で試行した。その結果、休日確保には事前計画と調整や取得しやすい雰囲気づくりが重要で、半日休暇の活用や期間をまとめた上での4週8休の達成が有効だとわかった。
 業務についても、特定の職員に偏ることなく、分担や引き継ぎができる体制を確立したり、外注活用やカイゼン活動による効率化が必要だと分析した。
 協力会社会である土木の林友会でも、閉所達成に向けた会合を持っており、17年度には12のモデル現場で、技能労働者も含めた4週8閉所を試行している。また昨年は、名古屋のトンネル現場でNATMのサイクルを工夫し、実際に4週8閉所を実現した。
 同社は「早く、良いものを、休暇をきちんと取りながらつくることが大切」(鯉田部長)としており、現場の書類フォーマットの統一や、電子黒板、電子野帳、測量方法のカイゼンなど、小さな取り組みの積み重ねでも、労働時間の縮減や効率化を図っている。技能労働者についても多能工化やスーパー職長制度などを活用していく。

◆現場ツールの数々
 こうした働き方改革の実現には、現場作業の効率化・生産性向上が不可欠だ。同社は油圧ショベルなどの建機を無人運転できる汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を現場投入している。一般的な建機の運転席にこの装置を取り付ければ、オペレーターが建機に搭乗しなくても運転が可能になる。
 もともと災害復旧など危険な現場での使用を想定して開発したが、今後ICTを活用した無人化施工技術として進化させ、労働者不足にも対応できるようにする。
 また潜水士のように、特殊な技能を持った労働者の不足に対し、水中インフラ点検ロボット「ディアグ」を開発した。

水中インフラ点検ロボット「ディアグ」

 ダムや護岸の水中構造物の調査には、通常は潜水士が潜って目視で点検を行っている。しかし潜水作業は水深40mの場合で連続数分しか作業ができない。
 ディアグは地上や船上から遠隔操作で点検できるロボットで、構造物のクラックや状態を調査できる。同社施工の東京スカイツリーで開発したジャイロ技術を生かした姿勢制御で、水流に影響されることなく鮮明な画像が撮影できる。この技術は国土交通省の「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム」に採択され、最高評価を得ている。

◆技能者の作業アシスト
 はつり作業やボルト締めなどは、技能労働者の作業として体に大きな負担がかかるものが多い。こうした作業をカイゼンすることも、担い手不足の解消や生産性向上につながる。
 同社は米国ekso社のアシスト装置「EksoZeroG」の現場導入を検証している。この装置は、バネの入ったアーム状の装置で、高所作業車の手すりや単管パイプなどに取り付け、チッパーやインパクトレンチなどの重い工具を吊り下げると、一定の範囲内で重量をサポートしながら自由に取り回しができる。

実証試験を行っている「EksoZeroG」

 はつりやロックボルト挿入、シールドマシンの組み立てなど、土木現場の重い作業負担を軽減する。
 同社では「3K(危険、きつい、汚い)からの脱却や安全性向上が図れる。魅力ある現場環境を整備して若手の入職にもつなげたい」(杉浦伸哉本部長室情報技術推進課長)と話す。
 装置は、同社の大阪機械工場や首都圏の地下鉄工事現場などで実証試験を行い、作業時間の14%削減や最大心拍数の軽減などを証明した。作業を行った作業員からも「疲れないし、休まずに作業が行える」と歓迎する感想が聞かれたという。
 この装置以外に「EksoVest」という、天井などを施工する場合に、腕を下方から支えるベストの導入も検討している。
 同社の4週8閉所に対する来年度以降の目標は、技能労働者も含めた「現場全体」の4週8閉所を、同社すべての現場に展開することだ。20年の東京五輪も迫ってきている。「生産性向上=働き方改革」の実現に向けて、全社を挙げた取り組みが進んでいる。

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