【働きかた】対話増やしてスムーズな働きやすさを! "魅せる職場"目指す三井住友建設の八王子計画新築現場 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【働きかた】対話増やしてスムーズな働きやすさを! “魅せる職場”目指す三井住友建設の八王子計画新築現場

左から由利所長、堂崎さん、先崎さん、加藤さん

 「建設業はやりがいも魅力もある仕事、土日が休めるようになれば大人気の職種になる力はある」。三井住友建設の東京建築支店が施工する「(仮称)八王子計画新築工事」の由利宏幸所長はそう語る。現場では4週5閉所を目標に掲げ、9月には月5閉所、10月には月4閉所を実現した。「契約工期や技術者の日給制などの課題もあり、週休2日閉所は難しい」としながらも、「まずは大型現場から時短実現に向けてできることを始めたい」と語る。
 現場は地下1階地上26階建ての住宅棟と地上6階建ての店舗を設計施工する計画で、延べ床面積は住宅棟が2万2029㎡、店舗棟が1万0295㎡。工期は2018年10月31日までを予定している。
 時短推進にあたっては、業務予定と終了時間を事務所内に掲示して状況を共有しているほか、土曜日を午後3時で閉所する「プレミアムサタデー」を開始した。「プライベートな時間を有意義に過ごしてもらいたい」という。また生産性向上を目的に同社が独自開発した「スクライムH工法」を採用し、主要構造部に場所打ちコンクリートを設けないプレキャストコンクリート工法で、1フロア4日の高速施工を進める。
 順調に進むかに見える時短と休日の確保だが、技術者にとっては手放しで喜べない側面もある。職長会で会長を務める向井建設(東京都千代田区)の堂崎直道氏は「閉所が増えても収入が減るなら休日にはならない」と指摘し、職長の藤鋼業(江戸川区)の加藤真一氏も「単身赴任者など休みがあっても現場へ出たい人は多い」、同じく職長の中道工務店(板橋区)の先崎正氏も「家族と過ごす時間も大切だが、まずは生活が第一」と口をそろえる。
 休日の確保は重要だが、収入が減少すればモチベーションは必ず落ちる。場合によっては建設業界を去る事例も少なくない。由利所長も「現実的に考えれば、単価の見直しも含めた検討をしなければいけない時期にきている」と語る。
 収入と休日という矛盾をどう解消するか。由利所長は「企業や業界全体で待遇を変える必要がある」と指摘する一方で、現場にもできる取り組みはあると語る。その一例として挙げるのは「働きやすい」現場づくりだ。

現場に平行して伸びるペデストリアンデッキから誰でも現場の風景を眺めることができる。駅利用者の視線を意識して、やる気を引き出す効果も期待される

 技術の発展は生産性を大きく向上させるが、その基本となるのは常に現場の人間関係だ。今回の現場では職長会室を設置し、職長同士のコミュニケーションできる環境を整えた。風通しの良い現場となることで、「少しの休憩時間でも顔を合わせ、言葉を交わせば次の作業がスムーズになる」と堂崎氏は強調する。また、現場で働く女性社員を中心にけんせつ小町活動「HACHIガール」を開始し、端午の節句や七夕、ハロウィンなど時季に合わせたイベントを実施している。現場内のコミュニケーションを促すだけでなく、現場を「魅せる」意識が建設業界を変えるきっかけになると由利所長は語る。
 現場の大きな特徴は、現場に平行して伸びるペデストリアンデッキの存在だ。通勤・通学時には多くの駅利用者が行き交い、誰でも現場の風景を眺めることができる。着工当初こそ足場などで目隠しすることも検討したというが、「堂々と仕事をしている姿を見てもらえ」という本店会議での一言をきっかけに「見られている現場」から「魅せる現場」へと発想を転換した。
 現場の取り組みを発信すれば働きやすさを高めるだけでなく、業界の3K(危険、きつい、汚い)イメージ脱却にもつながると指摘する。日常的に作業風景を見られているからこそ、「働きがいを持ち、生き生きと仕事に打ち込む姿を“魅せる”ことが建設業のイメージを変えるきっかけになる」と期待している。

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