【働きかた】先端技術導入しコミュニケーションで意識改革を共有 竹中工務店の「(仮称)飯田橋複合施設計画新築」現場 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【働きかた】先端技術導入しコミュニケーションで意識改革を共有 竹中工務店の「(仮称)飯田橋複合施設計画新築」現場

現場で働く方々

 「働き方改革は風通しをよくする活動だ」。竹中工務店が東京都新宿区で設計施工により進めている「(仮称)飯田橋複合施設計画新築工事」の福田秀樹所長はそう力を込める。先端技術を導入して生産性向上を図るとともに、コミュニケーションに軸足を置いて現場全体で意識改革への目標を共有し、日々の業務のさらなる改善を目指す。福田所長は「量ではなく質を上げていく」と前を向く。
 小学館発注の同工事はS造10階建てのホテル棟、RC造8階建ての住宅棟、S造3階建ての保育所棟を建設する計画で延べ1万8190㎡。工期は2016年10月6日から18年7月11日まで。
 現場の働き方改革について福田所長は「技術的な部分と非技術的な部分の2つに分けて、どのように取り組むかを考えた」と明かす。技術面では生産性を高めるため、BIMとICTを全面的に活用した。BIMは設計段階に加え、杭施工結果の見える化や掘削数量の日次管理、管理帳票の作成など施工段階にも積極的に導入し、業務の効率化を図った。

ホテル棟、住宅棟、保育所棟の3棟で構成する

 また、マイクロソフト社のヘッドマウント端末「HoloLens」に施工図や3Dデータを表示して天井スラブのアンカー墨出し作業の効率を高めた。そのほか、アイトラッキングを活用して現場巡回時の目線と指摘事項をデータ化。巡回の質の向上や時間短縮につなげている。
 一方、非技術的な部分の生産性向上について福田所長は「課題を認識して解決への強い意志を持たないと改善できない」と断言する。そのため週に1度、職員と意見を出し合う打ち合わせの場を設け、まずは一人ひとりの時間管理について議論した。「生産性を高めることは企業価値につながるという原点に、全員のベクトルを合わせることから始めた」と振り返り、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)を全員で話し合い、アイデアを出すことで風通しが良くなったことが1番の成果」と強調する。

福田所長(右)と千國氏

 最重視するのは意識の改革だ。職員には勤務通知書へ1カ月の残業時間目標を記入することや、行動予定表へ退社時間目標を明示することを求めた。
 また、朝礼についても必要性を議論した。現場全員でその必要性を再認識したため、モニターを活用して注意事項や作業動線などを短時間で共有できるように“デジタル化”した。福田所長は「一つひとつのことをゼロベースで議論することが重要となる」と語る。
 働き方改革の取り組みは効率化のみに留まらない。「話し合いを進める中で、取り組みを女性活躍やダイバーシティーの活動にもつなげようと考えた」(福田所長)。現場には職員や作業員が子どもを連れて来られるように「ウェイティングルーム」を整備したほか、女性技術者が建築主である小学館の担当者や女性技能者と女性活躍のあり方について意見交換するなど、けんせつ小町の活動にも力を注いでいる。

現場に設置したウェイティングルーム

 現在、同現場は月5閉所だが、17年9月からは6閉所も試行した。さらなる休日の確保について、福田所長は「時間に拘束されない働き方」の重要性を説き、現場にはフレックスタイムも導入した。
 福田所長は「1つの共同体として、ものづくりをすることは大事」としながらも「それぞれの協力会社の仕事は異なる。職員も家族や子どもの有無によってWLBが異なる。それを時間で拘束すると難しい。業界が変わるためには時間に縛られない働き方を考えなければならない」との認識を示す。
 協力会社で組織するリーダー会の会長を務める青木土木の千國祐作氏は「休める一方で給与の問題もあるので、他の現場で働くということにもなってしまう。あらゆる現場で閉所日が確保されれば」と展望する。

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