【藤本壮介氏初の大規模個展】多様なまま共存しつながる森/森美術館で11月9日まで | 建設通信新聞Digital

7月18日 金曜日

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【藤本壮介氏初の大規模個展】多様なまま共存しつながる森/森美術館で11月9日まで

大屋根リングの縮尺レプリカ。構想段階のスケッチも紹介


 東京都港区の森美術館で、建築家・藤本壮介氏初の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が開催中だ。大阪・関西万博の「大屋根リング」の一部を5分の1に縮尺したレプリカや、「仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設」のプロポーザル案を15分の1に縮尺した模型、さらには、藤本氏とデータサイエンティストの宮田裕章氏が構想した未来都市の大型映像インスタレーションなど、大迫力の展示の数々で、建築のスケールを体感できる。会期は11月9日まで。

映像インスタレーション


 森美術館の片岡真実館長は「建築は、建物の中に入ってそのスケールを感じることが非常に重要だ。そのスケール感をそのまま展覧会にできないか、そう考え、今回の展覧会は生まれた。藤本さんこそが、新しい建築展の形を一緒に考えてくれる人だと思った」と展覧会の“始まり”を紹介。

仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設模型


 一方、藤本氏は片岡館長の声がけに対し、「非常に難しい問題だった」と吐露する。そこから、自身が「何をやってきたのか。この先何をやっていきたいのか」を考え始めたという。議論を積み重ねていくうちに、「さまざまな個性やバックグラウンドを持った個人が多様なまま共存する。そして時に美しくつながり合う。そうした場所をつくっていきたいということがクリアになってきた」と話す。

これまで制作した模型が所狭しと並ぶ


 それはまさしく、「単純性と複雑性」「内部と外部」といった相反する存在が融和し、「区別を持たない世界」をつくってきた藤本氏の考え方の根幹で、「多様でありながら、ひとつ」を理念に生まれた大屋根リングにも共通する。

 こうした考え方が「混迷した世界の中で、未来の可能性や共生の可能性を示してくれるはずだ。未来を考える上で大きな示唆に富んだ展覧会になっている」と片岡館長は手応えを口にする。

 藤本氏は展覧会構成を考える中で、自身の原風景である、生まれ育った北海道の森を思い浮かべた。「多様な場所が森の中にはあり、さまざまな人が思い思いにいろいろなことができる。多様性を受け止める場所のモデルとして、展覧会のタイトルに『森』という言葉を使った」と明かす。

 その森をヒントに、「スケッチや模型、図面を見るだけでなく、空間的に体感できる展示」を考案していった。

ぬいぐるみがおしゃべりをする空間


 建築の展覧会としては異色の、ぬいぐるみがおしゃべりをする空間もある。自身が手掛けた建築作品がぬいぐるみとなり、互いに会話を楽しむ。その会話を聞いていると、それぞれの建築の特徴や設計の背景を知ることができるという、直感的な展示だ。

 このほか、空中も使った模型の展示空間には、これまで手掛けてきた模型が所狭しと配置され、藤本氏の頭の中をのぞき込んだような体験ができる。

 

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