【働きかた】閉所日増加のかぎは技能労働者の多能工化 収入増にも 安藤ハザマ | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【働きかた】閉所日増加のかぎは技能労働者の多能工化 収入増にも 安藤ハザマ

左から丸山所長、石澤氏、嶽氏

 「ほとんど『赤』の無いカレンダーで働いていた昔のことを考えると、1日も早く週休2日を実現したい」。横浜市で末吉配水池更新工事を進める安藤ハザマの丸山弘行所長の休日確保にかける思いは強い。閉所日の増加には工期や賃金など多くの課題が存在するが、「この10年間で業界は激変した。状況の変化に対応したアイデアを出していく」と、働きやすい現場づくりを積極的に推進している。現場を変えるかぎとなるのは、技能労働者の多能工化の推進だ。
 末吉配水池更新工事では、1955年に完成した川崎市上下水道局の配水池を更新する。約40万人への給水を継続しながら施設を撤去・築造するため、2池ある配水池の片方を稼働させながら交互に新しい池を構築している。施工は安藤ハザマ・大豊建設・若築建設・村本建設JVがDB(設計施工一括)方式で担当している。
 現場が住宅街の中心に位置することもあり、安全や騒音・震動など周辺環境に配慮すべき要素は多いが、業務量が増えても毎月第2、第3土曜日は閉所し、4週6閉所の工期設定は着工当初から継続している。週末の閉所は年配の技能労働者には「体を休められる」と歓迎する一方で、家庭を持つ技能労働者を中心に「より稼げる現場、企業へ行ってしまうこともある」と明成建設土木部の嶽裕司取締役所長は指摘する。それぞれの技能労働者によって現場に求める待遇の差を強く感じている。
 休日を確保する上で重視するのは多能工化による生産性向上だ。専門職種の仕事が終わってから別の仕事を手掛ければ、それぞれの専門職種で建設技能労働者を確保する必要がなくなり、ひとりの労働者が同じ現場で中長期的に仕事を進めることができる。現場代理人を務める石澤隆之氏は「同じ人数が現場で動いているため、工期を短縮できる局面は増える」と語る。
 また技能労働者にとっては作業効率が高まり手取りの収入が増えるほか、その現場への帰属意識も高まっていく。職長会をまとめる嶽所長は「工種をまたいだ混成チームで作業にあたれば現場での苦労や状況も共有できる。コミュニケーションが生まれるきっかけになる」と語る。石澤氏も「自分の作業が終われば良いのではなく、お互いの仕事に思いやりを持って進める意識が不可欠だ」と指摘し、生産性を高めるには多能工化という制度面の改革に加えコミュニケーションを促す現場づくりが必要と指摘する。「常に目的を共有し、誇りを持って働ける現場にしたい」という。
 ただ、多能工化は作業効率が高められる半面、技能労働者を1つの現場に「束縛」せざるを得ないデメリットもある。急な応援要請で単価が高い現場に技能者を派遣することが難しいのも悩みの種だ。働きやすい現場を実現するためには、これまで以上にしっかりとした信頼関係を築く必要があると石澤氏は指摘する。「多能工化すると現場の工程、段取りは日々変わっていく。お互いに納得して働けるしっかりとした工程管理が大切になる」とも。

2つ目の配水池更新工事が続く

 順調に機能する多能工化の取り組みだが、その成果は職長たちをまとめ上げる明成建設と安藤ハザマとの間で以前から続く「長い付き合い」があってこそだと丸山所長は指摘する。
 これまで現場で多能工を評価し、必要としてきた下地があるため新しい取り組みが生産性向上に結び付く。「協力会社の考え方次第で現場は変わっていく。価格だけを見て協力会社を選んでいては実現できない」と強調する。

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