【働きかた】土曜閉所へ職長会が協力体制構築 新東名高速道路湯船原トンネル工事 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【働きかた】土曜閉所へ職長会が協力体制構築 新東名高速道路湯船原トンネル工事

  


 「建築工事だけでなく、土木工事でも職長会は大きな役割を果たすものだ」。西松建設関東土木支社が進める「新東名高速道路湯船原トンネル工事」に取り組む野中康治所長はそう語る。今後、現場の4週6閉所、8閉所を実現するには、これまでとは異なる考え方で施工の工夫を凝らす必要があると強調する。 現場は静岡県小山町湯船から御殿場市神場にかけて新東名高速道路を新設する工事で、小山町湯船地区~上野地区間(上野工区)の延長約1600mのトンネル2本と切土・盛土工事で構成し、発生した土砂は13㎞離れた神場工区に運搬して盛土材に活用する。工期は2015年10月から20年7月までを予定する。
 建設業の働きやすさとは何かが問われる中で、この現場では「職長会」の存在が労働環境を改善するカギになるという。職長会を通じて休日も調整しており、「(土木工事は)協力業者の数が少ないが、安全確保や長時間労働是正といった考え方を共有するためには職長会でのコミュニケーションが必要だ」と指摘する。当初から現場は4週5閉所でスタートしたが、現在は4週6閉所の導入にも乗り出した。技能労働者の高齢化が進むほど、身体を休める休息のない労働形態では現場で十分な能力を発揮することもできない。

 職長会会長を務める共栄機械工事(神奈川県鎌倉市)の金子裕介工事部作業所長は「これまで日曜休みに慣れていたが、今回の現場で第2、第3土曜日が閉所となり身体を休める機会は増えた」と語る。副会長の宮本組(愛知県東海市)名古屋支店の飯干博敏工事部主任も「自由な時間が増えればメリハリが生まれ、次の週に頑張ろうという意識も生まれる」と実感している。
 同じく副会長の吉田西豊建設(横浜市)の緒方茂行常務取締役所長も「休日のない長時間労働で負担が増えれば効率も下がり、事故も発生する。工期の問題はあるが、働く人の効率は上がる」と断言する。

休みvs.稼ぎ 二極化の現場
双方の価値観共有が重要

 「長時間労働の問題は業界全体の問題として取り組む必要がある」と語る野中所長だが、ただ休日の数を増やすだけでは意味はないとも。「たった1日の閉所日と交代で取得する不定期の休日しか週休が取れないようでは良い労働環境とはいえない。週末に2連休程度は取れなければ家族と過ごすのも難しい」と連休取得にも意識を向ける必要があると語る。
 現場で働く技能労働者の意識は変化している。飯干氏は「休みは無くとも稼ぎたい層と安定的な休みのある仕事を求める層で二極化している」と指摘する。業界全体で閉所日を増やす傾向は続いているが、世代を問わず休日取得への意識は個人によってギャップがあるという。こうした状況に対し緒方氏は「お金がほしい人も、休みたい人もいる。両者が納得し、お互いが建設業界で働いていけることが最も大切だ」と語り、最大限の能力を発揮するためには双方の価値観を共有するコミュニケーションの重要性が高まっていると分析する。
 定期的に開催する職長会では、各工種の職長が集まって現場パトロールや作業内容を共有している。「同じ現場でも、こうした機会がなければ全体で話す機会は少ない」と語る金子氏は、コミュニケーションの回数も密度も増加したと振り返る。
 土木工事ではまだ職長会が一般的な存在とはいえないが、野中所長は、「職長会を通じて全体の流れを理解することが工程短縮の大きなメリットになる」と強調する。現場で働く人間の価値観が多様化し、休日確保などの労働環境の改善には異なる価値観のすり合わせが不可欠となった。コミュニケーションの重要性が増しているからこそ、関係者が納得できる調整を実現するには職長会を活用した協力体制を構築する必要があると語った。