【働きかた】目指す「4週8閉所」には職員と技能者それぞれの思いをくみ取れ 清水建設JV・江東南北線トンネル作業所 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【働きかた】目指す「4週8閉所」には職員と技能者それぞれの思いをくみ取れ 清水建設JV・江東南北線トンネル作業所

左から柳原副所長、今井所長、吉村課長

 「(休日よりも)現場で仕事をしていた方が楽に感じるかもしれないが、強い意思を持って現場を変えていかなければならない」。清水建設・鴻池組・岩田地崎建設JVが東京都江東区の中央防波堤内側埋立地で進める江東南北線トンネル作業所の今井克美所長は断言する。建設業の魅力を発信するため、協力会社、女性、若手といったさまざまな立場での働きやすい現場づくりと休日の確保を推進している。
 現場は国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所が所管する有明地区(10号地その2)から中央防波堤を結ぶ臨港道路(南北線)のうち、東京都港湾局が発注した中央防波堤内の陸上トンネル区間596.5mだ。重力式擁壁区間、U型擁壁区間、スリット区間、BOX区間で構成し、工期は2019年6月の完成を予定している。竣工後は往復4車線道路としてコンテナ車両などが使用する見通しで、交通混雑の緩和や貨物輸送の円滑化などが期待されている。
 ここで重視するのは「建設業の魅力を感じられる現場づくり」だ。女性技術者に配慮した女性専用のトイレ、更衣室、休憩所を完備して土木系女子大学生のインターンシップを受け入れたほか、親子現場見学会や小学生の現場見学会にも積極的に対応している。
 労働環境の側面でも、労働時間の適正化を始めとする環境改善に力を入れる。職員に対しては休日出勤した際の代休取得の促進や毎週水曜日に設定したノー残業デーの実施、育児期間中の社員のフレックスタイム勤務などに取り組んでいる。30歳以下のJV職員を対象に若手基礎技術試験を年1回実施するなど、働くモチベーションを保つ仕組みづくりにも注力している。「つらいだけでは仕事もつまらない。できる限りの努力をしたい」と今井所長は力を込める。
 こうした現場の働きやすさは職員や技能者からも高い評価を受ける。職長会会長を務める大崎建設(東京都文京区)の吉村有史土木部課長は「働きやすい環境では仲間意識が生まれ、品質や安全性も高めることができる」と確信している。

江東南北線トンネルの現場

 休日の確保に向けては既に職員の週休2日を達成しているが、「現場が気になって休まらない」ことから完全閉所を望む声は多い。清水建設では土木工事の全現場で2018年度末までに「4週6閉所」、21年度末までに「4週8閉所」の実現を目標に掲げており、この現場でもICT技術を活用した測量や工事写真管理ソフトを利用した膨大な工事写真の管理など新たな技術で生産性向上に取り組み、毎月第2土曜日の閉所を実現している。柳原哲也副所長は「日中は現場に出ている。現場事務所に戻ってからの作業量をどれだけ減らすかが重要になる」と指摘する。
 ただ、こうした先進的に取り組む現場であっても「4週8閉所」の実現に向けては多くの課題がある。生産性を向上して閉所日を設定しても、その日に別の現場へ出向かざるを得ない技能者は多い。「以前と比較すると休日を求める声は増えた」(吉村氏)ものの、従来の日給に対応した年収を維持できなければ休日確保は新たな負担になる。今井所長は「元請けは社会の流れに乗って働き方改革を進めているが、協力会社では収入を減らしてまで休みを取ることはできない」と指摘し、「協力会社に負担が集中する状況をどう改善するかを考える必要がある」と強調する。
 こうした元請けと協力会社のすれ違いを解消するための一例に挙げるのは、職長会の存在だ。吉村氏は「働きやすい環境をつくるのが職長会の力。職員と技能労働者それぞれの思いをくみ取って、ストレスなく働ける環境を整える。短い工期で利潤が生まれれば、両者の負担が軽減できる」と語り、そうした現場を増やすことが「4週8閉所」の実現につながるとみている。
 今井所長は朝礼で繰り返し「建設業は変わらなければならない」と訴えている。「国が動かないとわれわれが動けないように、われわれが変わらなければ協力会社も変わることはできない。元請けの責任は大きい。まずはわれわれが率先して動かなければ」と自らに言い聞かせるように語る。

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