【施主の要望、その場で確認合意】社を挙げてBIMを積極導入 フジタが見据えるこれから | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【施主の要望、その場で確認合意】社を挙げてBIMを積極導入 フジタが見据えるこれから

 「BIMなしでは、ここまで順調に進まなかった」と力説するのは、フジタが奈良市で施工する大和ハウスグループ新研修センターの現場を統括する森田博喜所長だ。現場は8月に上棟し、仕上げ工事が本格的に始まった。鉄骨が複雑に交差する建て方作業では製作工場と協力会社との緻密な連携をBIMが後押し、施主である大和ハウス工業との打ち合わせでも迅速な合意形成の下支え役となっている。

森田所長(左から3番目)ら現場関係者


 社を挙げてBIMを積極導入するフジタにとって、同現場はBIMモデルを設計から施工、維持管理まで一貫してつなぐ初の試み。施主であり、親会社でもある大和ハウス工業ではBIMを出発点に建設デジタル化に動き出しており、将来を見据えたBIMのフラッグシッププロジェクトにも位置付ける。完成後は創業者生誕100年に合わせたグローバル人財の育成拠点となり、大和ハウスグループにとってのメモリアルプロジェクトでもある。

 「思いがたくさん詰まったプロジェクトだけに、施主からの要望も多岐にわたり、設計部門から引き継いだBIMモデルは常に進化している」と森田所長が説明するように、現場は要望を一つひとつくみ取りながら形にしている。合意形成の手段としてBIMが有効に機能している。

 大和ハウス工業の池端正一新奈良研修センター開設準備室長も、その効果を実感する1人だ。「現場との打ち合わせに『次回』はない。われわれの要望がカタチとなって示されるため、その場での確認合意を後押ししている」。現場事務所ではBIMオペレーターが要望をモデルに反映し変更後の状況を見える化、施主と大まかな方向性を固め、次工程への対応を図っている。変更による業務の手戻りの軽減にもつながっている。

 現場作業面でも、積極的にBIMが活用されている。鉄骨部材は現場に隣接する大和ハウス工業奈良工場で製作され、順を追って地組ヤードまで運ばれる。現場担当の西澤隆雄氏は「工場や協力会社とはBIMモデルを使って運搬から地組み、建て方までの流れを細かくシミュレーションしながら、認識を一致させ作業に挑んだ」と振り返る。構造モデルを製作データとして活用したことで部材の不具合もなく、スムーズな建て方が実施できた。とび職が情報端末でBIMモデルを確認し、建て方に活用する姿は、他の現場では見られない光景の1つだ。

 構造が複雑であるため、鉄骨部材が複雑に交差しており、図面だけでは理解しにくい部分も数多くあった。フジタはオートデスクの『Revit』を標準BIMソフトとして位置付けており、現場にもRevitの専任オペレーターを配置した。現場の全職員はプロジェクトレビューソフト『Navisworks』を操作でき、それぞれがBIMモデルを操り、自らの業務に活用している。森田所長は「工事が進むにつれ、BIMに対する職員の意識も向上している」と感じている。

 現場では日々の進捗を360度デジタルカメラで撮影し、その画像データをBIMモデルと比較する進捗管理も展開中。西日本支社計画設計部の石川陽一郎担当課長は「これから仕上げ工事が本格化する中で、合意形成の有効なツールにもなる」と期待を寄せる。施主との合意形成では「BIMの見える化効果により、奥深い対話ができている」(池端室長)という。

360度カメラによるBIMモデルと現状の比較


 10月末時点の工事進捗率は45%。仕上げ工事にステージはシフトし、現場入場者数も300人を超え、これから最盛期を迎える。完成は2021年6月。森田所長は「BIMのモデルは設計から施工、維持管理へと引き継がれながら成長していく。これからの現場ではBIMが当たり前のように使われていくだろう」と実感している。

現場は仕上工事が本格化

【工事概要】
▽名称=(仮称)大和ハウスグループ新研修センター建設プロジェクト
▽建築主=大和ハウス工業
▽用途=集会所付き研修所
▽基本計画・全体監修=小堀哲夫建築設計事務所
▽設計・施工=フジタ、大和ハウス工業
▽構造規模=S造4階建て延べ1万6956㎡
▽建築面積=7106㎡
▽建設地=奈良市西九条町4-1-1
▽完成=2021年6月予定

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