【深化する関西の建設ICT⑤】フジタ 維持管理までの一貫BIM始動 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【深化する関西の建設ICT⑤】フジタ 維持管理までの一貫BIM始動

 フジタは、BIMの導入に本腰を入れる。既に150件を超えるBIMの導入実績があるものの、4月より名称を新たにした「BIM推進部」を軸に導入速度を一気に押し上げる。BIMを出発点に建設デジタル化に乗り出す親会社の大和ハウス工業に追随するように、まずは2021年度末までに設計段階の完全BIM化を目指す。奈良市内では設計から施工、維持管理までを見据えたBIMの一貫プロジェクトが始動した。

BIMモデルの連携

 社内ではBIM推進部を中心に導入拡大への体制が形づくられている。本社の設計推進部に加え、東・西日本支社にもBIM担当を置き、導入拡大に向けて関係部署が連携する仕組みが整う。BIM推進部長の宗像和雄氏は「当たり前にBIMを使う風土を形作る」と意気込みを語る。重要視するのは設計から施工への一貫したBIMの普及だ。実績150件強のうち、設計・施工案件での導入はまだ30件にとどまる。「設計の完全BIM化が実現すれば一気にシフトチェンジできる」と、推進部部長の小田博志氏も手応えを口にする。

 親会社の大和ハウス工業は生産改革を推し進め、BIMを軸に建設デジタル化への転換を図っている。奈良市に建設する「大和ハウスグループ新研修センター」は創業者生誕100年に合わせた記念プロジェクトとともに、BIMを設計から施工、維持管理まで一貫して活用するフラッグシッププロジェクトとしても位置付ける。規模はS造4階建て延べ1万6956㎡。基本計画を建築家の小堀哲夫氏、設計と施工をフジタが担っている。

 設計段階では、標準BIMソフトに位置付けるオートデスクの『Revit』をベースに意匠、構造、設備の統合モデルを作成、建築確認申請もBIMモデルから出力した図面類を検査機関側とクラウド上で協議した。大和ハウス工業とは常にモデルを共有しながら建物の細かな部分まで合意形成してきた。洗練された意匠デザインの同プロジェクトは構造部分が複雑となり、推進部次長の長岡拓哉氏は「設計段階では統合モデルを使い、不整合を事前にチェックできた」と強調する。

 現場は8月に上棟し、現在は仕上げ工事が本格化しつつある。作業所長の森田博喜氏は「大和ハウスグループの思いが詰まったプロジェクトだけに、要望を一つひとつ汲み取りながら進めている上でBIMが有効に機能している。設計から引き継がれたBIMモデルは常に進化している」と強調する。現場の施工図チームにはBIMのオペレーターも置き、施主からの変更要求にも、その都度モデルを修正しながら合意形成している。

大和ハウスグループ新研修センター現場


 鉄骨が複雑に交差する建方作業もBIMが有効に機能した。鉄骨製作を担当した大和ハウス工業奈良工場は現場に隣接しており、部材を運搬、地組みして建てる手順で進めてきた。現場担当の西澤隆雄氏は「とび職もBIMを使って難解な建て方手順を確認した。工場の製作部材の不具合もなく、現場作業も手戻りなく進めることができた」と明かす。

 現場では日々の進捗を360度カメラで撮影しており、その画像データをBIMモデルと比較する進捗管理も試みている。西日本支社設計統括部の石川陽一郎氏は「今後仕上げが本格化した際には特に有効なツールになる」と考えている。

 21年6月の完成を目指し、現場は折り返し地点に入った。設計段階から打ち合わせに参加していた森田所長は「わたし自身初めてのBIM導入プロジェクトで当初は不安もあったが、現場が動き出し、BIMの効果に触れる中で、その可能性を実感している」と感想を述べる。

 設計から施工へと引き継がれたBIMモデルは進化しながら、完成後には維持管理モデルとして活用される。「ここでの成果を他のプロジェクトにもしっかりとつないでいきたい」。森田所長の言葉はプロジェクトに携わる関係者の共通する思いでもある。

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