【BIM未来図】梓設計×オートデスク(後) | 建設通信新聞Digital

5月29日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図】梓設計×オートデスク(後)

ワークフロー確立に戦略的提携/設計価値を高めるデータ構築

(左から)オートデスク社長 中西 智行氏、梓設計社長 有吉 匡氏

――オートデスクとの協力体制構築のきっかけは

 有吉 梓設計は以前から別のBIMツールを使用しています。それは今後も継続して使っていきますが、BIM戦略の実現にはBIMの「I」(インフォメーション)の部分を社内で共有していかなければいけません。クライアントとも共通して使えるプラットフォームが必要となり、その基盤にオートデスクのRevitを位置付けています。
 当社の海外プロジェクトでもBIM指定のケースが多くなり、クライアント自らがBIMを活用するケースも増えています。こうした動きは世界のスタンダードであり、今後は国内プロジェクトにも広がってきます。
 22年9月に米国・ニューオーリンズで開催されたオートデスクの国際カンファレンス『Autodesk University』(AU)に2人の担当者を派遣し、世界のトップランナーがプロジェクトマネジメントにBIMを積極的に使っているとの報告が、MOUを結ぶきっかけになりました。BIMトレンドと当社の現在地を知る場として23年に続き、10月に米国・サンディエゴで開かれるAU2024に、マネジメント層を含む計5人を派遣する予定です。

 中西 AU2023でオートデスクは『Autodesk AI』を発表しました。Autodesk AIはオートデスクのデザインと創造のプラットフォームに組み込まれたオートデスク製品で利用可能なテクノロジーです。われわれはソフトウエアを提供するソフトベンダーから、業務のワークフロー全体を支えるプラットフォームサービスへの転身を図っています。
 既に日本ではゼネコンや設備工事会社など複数の企業とMOUを結んでいます。その中でも梓設計様はBIMとデジタルの融合を推し進めるトップランナーの1社です。当社がプラットフォーム戦略に打って出るタイミングで、同じ考え方、ビジョンを持つ梓設計様と連携関係を構築できたことは、当社にとっても大きな意味を持ちます。

――BIM導入による成長の道筋は

 有吉 BIMの導入は着実に進んでいます。既に意匠は基本設計で100%となり、実施設計段階では24年に50%、25年には70%、26年には100%の到達を計画しています。今年1月にはBIMマネージャーとBIMコーディネーターという担当者の役割も明確化しました。
 BIMマネージャーは海外案件で求められるBIM実行計画(BEP)を理解し、横断的なマネジメントができる人材となり、現在2人を任命しています。BIMコーディネーターについてはビルディングタイプごとに計20数人を位置付けています。
 われわれが大切にしている設計情報は、施主の要望、設計の法的要件、そして設計の妥当性です。品質チェックやプロセス管理では特にBIMのIに当たる設計情報の部分が重要になります。蓄積した情報を効果的に使ってアレンジすることにより、設計のスピードは格段に早まり、品質の向上にもつながります。データベースの構築が何よりも大切になると考えています。

 中西 Revitは非常に間口の広いBIMツールです。使い手のやりたいことが明確になって初めて力を発揮します。間口が広いというのはユーザーの課題解決に対し、非常に柔軟に対応できるということでもあります。設計の進め方、課題をしっかりと整理し、目的を決めて取り組めば、最大限にRevitのポテンシャルを発揮できます。
 さらに、Revitで作成されたBIMデータを組織の資産として蓄積し、必要とする関係者がアクセスするCDEをACCプラットフォームで整備することで、データの分析と可視化、データに基づく経営における意思決定への活用につなげることが可能となり、AIへの活用も期待できます。
 梓設計様はBIMを業務変革のためのプラットフォームと位置付けています。BIMの導入はまさに生産プロセス改革であり、経営の根幹に当たる取り組みに他なりません。特に維持管理段階にも目を向け、ライフサイクルを通じてBIMを有効に使っていこうと動き出した点も特筆できます。

 有吉 今年3月に梓総合研究所がBIM-FMソリューション『AIR-Plate』をリリースしました。空港や病院など多棟管理のクライアントを中心に、採用事例も増えつつあります。AIR-Plateは当社のBIMワークフローの中で、維持管理段階のソリューションツールになります。クライアントが使えるBIMツールとして普及させたいと考えています。
 オートデスクとのMOUをきっかけに当社のBIM戦略がスタートしました。国土交通省が掲げるBIMレベルに例えるなら、現在の当社はレベル1からレベル2に踏み込んだ段階です。BIMプラットフォームを確立し、26年からはレベル3となるBLM(ビルディング・ライフサイクル・マネジメント)の領域に到達したいと考えています。

梓総合研究所の「AIR-Plate」



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