【BIM未来図】丹青社(上) デザインと制作の一体横断組織/「BIMレベル3」到達へ | 建設通信新聞Digital

5月8日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図】丹青社(上) デザインと制作の一体横断組織/「BIMレベル3」到達へ

BIMの全社展開に向けてオートデスクと新たな戦略的提携(MOU2.0)を結んだ丹青社の小林統社長は「BIMの浸透を組織横断で取り組める体制に切り替え、新たなステージに踏み込む」と語る。目指すのは全社で統合データの運用を実現する「BIMレベル3」への到達だ。同社の歩みは内装ディスプレー業界のBIMステージを押し上げるきっかけにもなろうとしている。

小林社長


2024年10月に米国サンディエゴで開かれたオートデスクの国際カンファレンス『Autodesk University(AU)』に参加した小林社長は、海外の最新事例に触れる中で「デザイン(設計)と制作(施工)がBIMデータを軸につながることの大切さを改めて実感し、われわれが目指すBIM活用の方向性が間違っていない」ことを確信した。

現行3カ年中期経営計画の2年目となる26年1月期のスタートに合わせ、バリュープロダクションセンターを新設したのも「BIMを軸にデザインと制作が一体的に動き、最前線の事業部門と密接に結びつく流れをつくる」ことが狙いにある。

これまでデザインと制作の両部門はそれぞれが主体的にBIMを推進していた。バリュープロダクションセンターでは設計と施工の戦略機能を持たせ、その中にDX・BIM戦略部を設け、両部門がBIMを軸に連携する枠組みを形づくり、その成果を見える化し、事業部門に共有する役割を担う。

「これからは蓄積したBIMデータを全社で活用していく。オートデスクとのMOU2.0は、次のステージに向けた重要な一歩になる」。22年9月に結んだMOU1.0では、蓄積したBIMデータを社内で共有するBIMプラットフォーム『Tansei BIM Platform』の構築に力を注いできた。これからはプラットフォーム上で組織が横断的にデータを活用するフェーズになる。

BIMデータをつなげる大切さを実感したAU2024


同社はオートデスクのBIMソフト『Revit』を全面導入し、建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』にデータを蓄積、共有している。MOU2.0ではデザインと制作の連携による生産性向上にとどまらず、サプライチェーンを含めた業務プロセス全体の円滑な流れを整えることで、顧客への付加価値提供にも結び付ける。

到達点の指標として、英国のBIM熟練度レベルを位置付け、中期経営計画最終の27年1月期をめどに、統合モデルを全社運用する「BIMレベル3」の到達を目指す。ACCを基盤としたCDE(共通データ環境)で、企画立案から設計、施工、維持管理までの各フェーズをつなぐ流れを構築し、プロジェクト関係者と密接に情報を共有していく。「私自身も先頭に立ってBIMが共通言語であることを全社員に呼び掛けていく」と力を込める。

同社のBIM導入は、16年にさかのぼる。MOU1.0を機に標準ツールとして位置付けたRevitの活用率は着実に高まりを見せているが、まだ完全に移行できたわけではない。「活用しきれていない社員をしっかりと引っ張り上げていくことが重要であり、みんなで取り組む状態にならなければ、BIMレベル3の到達はない」と考えている。社内では新設したバリュープロダクションセンターが先導する形で、BIMのスキルアップに向けた新たな仕掛けも動き出した。

BIMが社内の共通言語になろうとしている



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