【BIM未来図】船場(下)BIMレベル5逆算した戦略立案/ACCと基幹システム連動 | 建設通信新聞Digital

10月15日 水曜日

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【BIM未来図】船場(下)BIMレベル5逆算した戦略立案/ACCと基幹システム連動

船場とオートデスクのMOU主要メンバー


 船場の小田切潤社長は、英国のBIM熟練度レベルに例え、自社のBIMデータ活用に向けた到達点を見定めている。「現在、英国BIM熟練度レベルはグローバルでレベル3まで定義されているが、当社は独自にレベル5までを定義し、そこから逆算したBIM経営戦略を立案、実施している」と先を見据えている。オートデスクとの戦略的提携(MOU)に合わせ、将来に向けたBIMレベルの形を描くよう指示を出した。

 レベル4では、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』と基幹システム系ツールを密接に連携し、プロジェクト関連の情報だけでなく、事業運営に関わる情報まで全てを集約し、見える化することで組織がリアルタイムに動ける「経営BIM」を確立する。

 その先に描くレベル5の姿は、顧客や協力パートナーも含めた「誰もが直感的に使えるBIMの一般化」だ。空間創造企業の同社が掲げるコアコンピタンスは「クリエーティビティー」と「顧客リレーションシップ」であり、そこに向かうための最適な手段としてBIMを経営戦略の中核に位置付ける。「重要なのは当社の付加価値とは何かを常に考え、最適な選択ができるようにしていくこと」と力を込める。

 生成AI(人工知能)の飛躍的な進化によって、蓄積したデータの利活用が多様な広がりを見せる時代になった。オートデスクは9月に米国テネシー州ナッシュビルで開いた国際カンファレンス「Autodesk University(AU)2025」の中で、人間を介さず自律的に計画を立て実行する「エージェント型AI」機能への対応を発表し、来場者の注目を集めた。

レベル5では誰もが直感的に使えるBIMの一般化を目指す


 オートデスクの中西智行社長は「船場が描くレベル5は未来の話をしているようで、実はもう目の前まで来ている動き」と説明する。BIMデータ活用の対象を設計から施工に広げ、ACCを基盤にデータを蓄積していく船場は、BIMと基幹システムとのデータ連携も推し進めようとしている。「それにより蓄積データの価値は大きく進化するだろう」と期待している。

 BIM活用の新たなステージに踏み込む船場は何を重要視しているか。近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)を戦略ワードに設定する企業が増えているが、小田切社長は「DXは全てのデジタル化を包含してしまい、目的が見えにくい。あえてBIMをキーワードにすることで、社員一人ひとりが自分事として業務改革を考えるようになる」と語る。

 2024年のBIM CONNECT本部設立によって、社内のBIM意識は一気に高まりを見せた。小田切社長のトップダウンによって、BIMを経営戦略の中核に位置付けるとともに、オートデスクとのMOUにも踏み切った。多喜井豊執行役員BIM CONNECT本部長は「まさにホップ・ステップ・ジャンプで次のステージへと足を踏み入れようとしている」と強調する。導入時から推進役として奮闘してきた大倉佑介BIM CONNECT本部戦略企画部長も「これからが新たなスタート」と力を込める。

 BIM経営を選択した小田切社長は「非効率的な流れを払拭し、BIMの習熟度を高め、『クリエーティビティー』と『顧客リレーションシップ』に特化することでさらなる競争優位性を確保する。われわれにとってのBIMは、まさにディスラプション(破壊的イノベーション)でもあり、本質的な競争優位性を強化するためのもの」と言い切る。内装ディスプレー業界のBIM普及も後押ししようと動き出した船場の「絶え間ない挑戦」の幕が開いた。

 

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