【BIM未来図】東洋建設(下) 集約した是正個所の現場周知が焦点/Buildトライアル現場拡大 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM未来図】東洋建設(下) 集約した是正個所の現場周知が焦点/Buildトライアル現場拡大

 2025年1月の引き渡しに向けて東洋建設が設計施工で取り組む保管倉庫プロジェクトは、クラウドを活用した監理者検査の効率化に向けるトライアルの場でもある。同社は設計や施工の情報共有基盤に、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を導入しており、検査へのチャレンジとして新たにACCの施工管理向けソリューションとなる『Build』の本格活用に乗り出した。

 Build活用を指揮するDXデザイングループ長の前田哲哉建築事業本部設計部部長は「この現場を出発点に検査全体の新たなスキームづくりを推し進めたい」と先を見据えている。先行して取り組む監理者検査では自社の監理担当が設計図面どおりに施工されているかをチェックする作業となるため、「自社内でBuild上に情報をアップすることには支障ないものの、集約した是正箇所をいかに現場内で周知し、協力会社各社に取り組んでもらうかは現場の腕の見せ所になる」と期待をのぞかせる。

監理者検査のトライアル現場風景


 保管倉庫プロジェクトを統括する関東建築支店建築部の岡田文人作業所長は「社内の統一ルールを確立し、各検査にBuildを全面的に位置付けるのは時間がかかる」と考えている。検査業務は、監理者検査、作業所検査、建築部検査、そして竣工検査というように順を追って進めていく。建築工事における検査の進め方は作業所長によって異なり、しかも建物用途によって検査のポイントに違いがある。

 「工事内容によっても、指摘事項の重要箇所が変わるだけに、異なるビルディングタイプごとにトライアルを進め、それぞれで進め方や基準を導き出すことが求められるだろう」と続ける。既に2件のプロジェクトで監理者検査の試行が進められてきた。今回はBuildを本格活用するトライアルになるだけに「われわれ現場がきちんと効果と課題を導き出すことが重要になる」と強い使命感を持っている。

 大谷健司設計部部長は「社内でも検査の進め方は異なり、支店単位で書式も違う。そうした基準類の統一化も進めていく必要がある」と今後を見据える。Buildの活用を先導するDXデザイングループも実績づくりに向けてアクセルを踏み込む。ACC活用の推進役を担う北祐一郎氏は「全国の現場への呼び掛けを本格化している」と明かす。既に3現場ほどが前向きに協力を承諾しており、検査業務の効率化に向けたBuild活用のトライアルを広げていく方針だ。「現場規模によって導入効果に違いが出てくるだけに、これからは大型工事を中心に試行を呼び掛けていきたい」と強調する。

 ACCは国内の導入企業が300社を超え、日本国内のユーザー会も発足した。これまではACCでワークフロー全体を管理する『Docs』の活用が進んできたが、最近はゼネコンを中心に生産性向上をさらに推し進めようと、施工管理に強みを発揮するBuildの活用が一気に進展してきただけに、オートデスク内でも「東洋建設が試みる検査業務への活用は先導的な試み」(福森稀典コンストラクション・コンサルタント)として注目を集めている。

 誰もがつながり合う建設クラウドプラットフォームのACC上で、検査業務の円滑なスキームを構築するためには「いかに現場を支える職人と密接に連携できるかが焦点になる」と岡田氏は強調する。監理者検査を足がかりに完了検査全体に適用しようと踏み出した同社の挑戦は、建設業界におけるクラウド活用の新たな扉を開けるきっかけになろうとしている。

左から三田氏、仲村氏、古谷氏、前田氏、岡田氏、大谷氏、北氏



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