【BIMつなぐ新たな潮流②】紙のデジタル化では成立しない クラウドで蓄積データ共有 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流②】紙のデジタル化では成立しない クラウドで蓄積データ共有

 プロジェクトの関係者が多く、協働作業でものづくりを進める建設業にとって、関係者のコミュニケーションが生産性を大きく左右する。正しいデータが円滑に共有され、最新の情報を皆で共有できる基盤があれば、同時進行で作業は進み、生産効率は一気に向上する。

 建設業界でBIM導入が広がる背景も、生産プロセスのデータを一元管理したいとの思いからだが、社を挙げてBIMを導入したものの、思うような成果に結び付いていないと悩む企業は少なくない。オートデスクでコンストラクションクラウドの技術営業を担う山根知治氏は「紙をデジタルに置き換えるだけでは生産性向上につながらない」と語る。建設生産のデータは常に成長しており、リアルタイムに最新データを共有できる基盤が整わなければ「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)は成立しない」と強調する。

 既に企業の中には、BIMを出発点にDX戦略にかじを切る動きが広がっている。設計から施工、維持管理までの建設ライフサイクルを通し、蓄積したデータをいかに活用するか。生産性や品質の向上だけではなく、新たなビジネス展開にも情報を利活用するには蓄積データを格納するためのプラットフォームが求められる。設計や施工の生産部門だけでなく、営業や管理部門も含めてデータを一元管理することがDX戦略の基盤を成すだけに、データは大容量になり、その出し入れにはクラウドの活用も不可欠だ。

Autodesk Construction Cloud(ACC)の枠組み


 同社の『Autodesk Construction Cloud』(ACC)は、そうした建設DXの実現に向けた次世代のクラウドプラットフォームだ。その前身となる『BIM360』は建設生産段階のクラウドプラットフォームとして、現在も日本を含め世界各国で導入が進んでいるが、同社は建設ライフサイクル全体を網羅した次代のプラットフォームであるACCへの全面移行を決めた。

 ACCは、ワークフロー全体を管理する『Docs』を基盤に、共同設計を担う『BIM Collaborate』、施工管理全体を網羅する『Build』、図面や3次元モデルの数量を拾う『Takeoff』のソリューションで構成し、プロジェクトの各ワークフローを通してコミュニケーションを一元管理する。業務実態やデータ活用の狙いに合わせて選択できるため、業態や企業規模にかかわらず導入が広がっている。

 同社は、汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』、BIMソフト『Revit』、3次元土木設計ソフト『Civil 3D』、コンセプトデザインソフト『InfraWorks』などデスクトップアプリケーションを数多く提供し、その多くは業界最大シェアを誇る。ACCは各ソフトのデータを利活用するための基盤として位置付けている。

 Revitを社内の標準ソフトとして全面導入する企業にとっては、蓄積したRevitデータをプロジェクト関係者間で共有するが、計画立案、設計、積算、見積もり、部材製造、施工、現場管理などの各部門に、外部の協力会社なども加わる。それら関係者すべてが円滑にデータを活用できる枠組みとしてACCを打ち出した。蓄積したデータは営業や管理部門も利用できることから、DX戦略のツールとしても、ACCの導入は広がりを見せている。

 先行する欧米では、ある建設会社が協力会社とのデータ共有にACCをフル活用し、プロジェクト総予算の2%削減を実現した事例などもある。注目すべきは、インフラ事業者が進行中のプロジェクト管理ツールとしてACCを全面活用している点だ。

大容量データの出し入れにクラウドは不可欠



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