【BIM未来図】新菱冷熱工業③ オフサイト生産の拡充で競争力強化/ユニット修正の自動化も実現 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM未来図】新菱冷熱工業③ オフサイト生産の拡充で競争力強化/ユニット修正の自動化も実現

 施工プロセス変革を推し進める新菱冷熱工業にとって、施工現場に設備部材をユニット化して供給するオフサイト化の拡充は、競争力強化の取り組みでもある。デジタルトランスフォーメーション推進本部デジタル推進企画部の施工プロセス課がデジタル活用の視点から施工現場、オフサイト、バックオフィスの3拠点をつなぐ役割を担っている。

 オフサイト化は、生産性向上の一環として同業他社も取り組む重点戦略だけに、企業によってオフサイトの在り方が異なる。同社は部材メーカーや協力会社と連携したファブレス生産のスタイルを志向する。3年前から本格的にかじを切り、現在はメーカー1社、管材代理店9社に加え、協力会社7社とも連携し、現時点で30現場を超える導入実績がある。

現在はメーカー1社、管材代理店9社、協力会社7社と連携


 これまでは施設図面やプロジェクト特性を踏まえ、ユニット化の対象を現場側に提案してきたが、最近は同課が主体的に導入対象を決めるケースも増えてきた。浜野明大デジタル推進企画部次長は「重要なのは従来のユニットにとどまらず、新しいユニットを考案し、全体工事量におけるユニット化率を上げて現場労務を削減することであり、BIM課と密接に連携しながらデータの有効活用に取り組んでいる」と説明する。

 本格導入するオートデスクのBIMソフト『Revit』を活用し、寸法などの数値を入力するだけで登録ユニットの修正を自動化するシステムも開発した。既に3種類のユニットに対応しており、技術特許も申請中。対応ユニット数を着実に増やす方針だ。一般的な部材や設備のユニット化は既に業界内で浸透しているが、現場合わせが必要な細かな部材まで対象を広げることがオフサイト生産の競争力につながる。「BIMデータ活用の拡大がユニット化の幅を広げている」と手応えを口にする。

 施工プロセス変革に向けて乗り越えるべき課題は多岐にわたる。DX開発課の萩野矢和弥課長は「社内のあらゆるデータを整理し、施工プロセスを通して蓄積したデータをいかに利活用するか、その基盤づくりがわれわれの役割」と説明する。2年間かけて現時点の完成形を示したが、進化を続けるDX戦略に合わせてデータベース基盤も微調整を進める必要があるだけに「常に最適解を追い求める」と先を見据えている。

 デジタル推進企画部の齋藤佳洋部長は管轄3課の成果が着実に積み上がる中で「これから施工プロセス変革の具体的な成果を社内に水平展開していく段階に入る」と先を見据えている。2030年に向けた同社の長期ビジョン「未来・環境エンジニアリングカンパニー」を実現する上でも「施工プロセス変革の達成に向けて各事業部門が歩調を合わせて進んでいくことが何よりも重要」と強調する。社内には、会社方針としてRevitと建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』の活用を明確に位置付け、業務での利活用を促すメッセージも発信している。

 同社では自社施設として、20年6月に新菱神城ビル(東京都千代田区)、23年11月にはイノベーションハブ本館(茨城県つくば市)が竣工し、現在は26年夏の完成に向けて新本社ビル(東京都新宿区)の工事が進行中。プロジェクトは設計者の三菱地所設計と連携したBIM活用のトライアルプロジェクトでもあり、施工プロセス変革で施工現場やオフサイトとともに重要な役割を担うバックオフィスの具体検証の場にもなっている。

導入実績は30現場超



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