【BIM未来図・イクシリア①】「分かりやすさ」から仕事依頼 | 建設通信新聞Digital

5月21日 火曜日

公式ブログ

【BIM未来図・イクシリア①】「分かりやすさ」から仕事依頼

 「鹿児島にもBIMの輪が広がり始めている」。そう切り出すのは鹿児島市内に本社を置く建築設計事務所、ixrea(イクシリア)の吉田浩司代表取締役だ。日本でBIMが注目された2009年から、ことしが10年の節目。大手の設計事務所ではBIMワークフローの構築が進むが、中小規模でもBIMを武器にまい進する設計事務所が全国に点在する。吉田氏は「いまやクライアントがBIMを求める時代。建築家として欠くことのできないツールになる」と力を込める。
 吉田氏が独立したのは6年前のことだ。前職となる地元の建築設計事務所に勤めていた際、「BIMに触れたことが私自身を大きく変えた」と振り返る。その事務所では前田建設グループでコンビニエンスストアなどのメンテナンス工事を全国規模で手掛けるJM(東京都千代田区)とパートナー契約を結び、業務ツールとしてBIMをフル活用していた。
 「簡単に図面を出力でき、顧客との打ち合わせもしやすい。圧倒的なスピードと直感的な操作感が魅力」とBIMの効果を肌に感じ、独立の際にはBIMソフト『ARCHICAD』を武器に「羽ばたこう」と心に決めた。独立後もJMとの設計協力を続ける中、コンビニエンスストアの上に店舗を併設するS造2階建て延べ400㎡の複合商業施設が、飛躍への転機となった。

飛躍への転機となった複合商業施設

 施主から「BIMを使った分かりやすい設計」が認められ、別の商業施設の設計も依頼された。実は、そこに入居したテナント企業からも保育園の設計を任され、BIMをきっかけに立て続けに仕事が舞い込んできた。「大手設計事務所よりむしろ、わわれわのような規模の事務所の方がBIM導入効果は高い」と実感している。
 2013年4月の独立から、スタッフ数は7人にまで増えた。設計実績は累計で200件に届く勢い。JMからの仕事が半分以上を占めるものの、延べ3000㎡を超える商業施設など大型プロジェクトの仕事も手掛けている。「建物規模が大きい方がBIMによるスケールメリットを生かしやすく、少人数で効果的に手間をかけず設計ができている」
 特に店舗設計では、外装や看板など、建物の見え方が重視される。「3次元の分かりやすさがBIM効果の1つ」と、民間の仕事を手掛ける中で強く感じているものの、公共事業では「まだBIMの存在感は薄い」とも考えている。ある自治体の体育館改修設計を受託し、発注者にBIMでプランなどを説明したが、設計修正の際には納品した2次元図面に手書きで加えられ、「せっかくの3次元データの意味を成さなかった」との苦い思い出もある。
 吉田氏は「私自身がBIMをきっかけに仕事を得ている状況を知ってもらい、少しでも多くの設計者にBIMを使ってもられば、きっと未来は開けるはず。BIM普及のけん引役としても力を注ぎ、BIMの仲間をもっと増やしたい」と先を見据えている。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら