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【それぞれの2025】「技術が社会課題を解決」の信念で i-Con普及の立役者 CONTACT

 『建設現場の生産性を2025年度までに2割向上』の旗印の下、取り組みが加速するi-Construction。その普及を支え続ける影の立役者がいる。測量関連メーカー6社で構成する有志連合、CONTACT(建設戦略会議)だ。22年度は直轄工事で小規模施工に照準を合わせた要領が加わり、普及の流れが一気に地方公共団体発注工事まで押し寄せる中、CONTACTは設立当時から地域の支援を続けてきた。代表を務めるトプコンの吉田剛執行役員スマートインフラ事業本部長ら3人のキーマンに、組織の“これまで”と“これから”を聞いた。

左から室伏氏、吉田氏、富田氏


「誰かが汗をかかないとi-Conは普及しない」。地道な営業活動の中で聞いたこの一言がきっかけとなった。これを聞いたトプコンの江藤隆志代表取締役副社長執行役員品質保証本部長が関連メーカーに声掛けして18年2月に始めたのがCONTACTの前身となるi-Con勉強会だった。

 i-Conが国土交通省から新たな政策として発表されたのは16年12月。本格化したのは17年度からだが、実はトプコンではその20年ほど前の1990年代の終わりごろから情報化施工などとして、現場の生産性向上を後押しする商品を投入していた。

 吉田氏は「現場のデジタル化技術は米国に成熟した市場があり、日本でも同じように展開しようと考えていた」と話す。だが、壁にぶつかることになる。日本と違い、米国は生産性向上がインセンティブとなるため機材には惜しみなく投資する。公共発注機関で精度管理の規定に大きな違いがあることなどが理由だ。

 米国は性能発注、国内では仕様発注が主流となる。それぞれに長所・短所はあるが、仕様発注の場合、受注者による工夫の余地が限られ、新技術の導入に前向きになる企業は少なかった。しかし、こうした傾向も、国内の民間工事での導入件数の増加とともに徐々に流れが変わる。そうしたタイミングで発表されたのがi-Conだった。

 CONTACTで 事務局業務などを担うトプコンポジショニングアジアの富田克則 マーケティング&エデュケーション部兼カスタマーサポート&テクノロジー部長は、i-Conの発表当時について「発注者・受注者を含め混沌としている感じだった」と振り返る。

 このため「われわれも理解を深めて、取り組まないと普及しない」と焦りを感じていた。「公共工事の8割は地方公共団体の発注で技術系の職員が少ない」ことから、地域の支援が重要になると考えた。外部機関にアプローチするに当たり、覚えやすいCONTACTという名称で普及支援活動を始めた。

5月に初開催したICTユーザーカンファレンスも盛り上がりを見せた 


 CONTACTは現在も発足当時とほぼ変わらず、トプコン、オートデスク、建設システム、ジェノバ、福井コンピュータ、ベントレー・システムズの計6社で構成する。施工技術総合研究所がオブザーバーとして加わり、地方公共団体との意見交換や課題抽出、地域建設企業への啓発活動などを展開している。

 活動の全ては手弁当によるもので、民間企業にとって負担は決して軽くない。営業と切り離し、啓発活動などに特化する取り組みは、トプコンにとっても初めてだったという。

 前例のない取り組みを進める中で大きな財産を得た。その1つが地域のイノベーター(革新者)との出会いだった。

 吉田氏は新技術の導入に意欲的な企業経営者らから「多くのヒントをもらった」と話す。自社の商品開発にフィードバックするなど副次的な効果もあったが、何よりも「彼らが良いと感じた技術を他の人に伝えていく」という好循環が生まれ、地域建設企業の育成につながった。

 着実な活動が認められ、CONTACTは19年度に国交省のi-Construction大賞を受賞した。さらに、同年度にCONTACTが支援する茨城県、20年度には同じく支援する山口、兵庫の各県が同賞を受賞した。評判が評判を呼び、現在は2市19県の計21地方公共団体を支援するなど活躍の場が広がっている。

 CONTACTで実務を担当するトプコンポジショニングアジアの室伏清マーケティング&エデュケーション部営業サポートグループシニアエキスパートは「地域に必ずいる」という多くのイノベーターとネットワークを築いてきた。現場を知り尽くす室伏氏は「取り組む企業はどんどん動き出している」と話す。企業だけでなく、発注者の地方公共団体も同様の傾向だという。

 吉田氏は、災害対応など地域を守る建設企業の重要性を指摘した上で、担い手不足などの課題に対して「i-Conは一つの答えだ。使わない手はない」と言い切る。吉田氏は「技術が社会の課題を解決する」という強い信念を持つ。それゆえこれからも、i-Conの普及に力を注いでいく。

地域建設企業向けの体験会を数多く開催してきた



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