「これからも鹿児島のトップランナーとして、BIM普及をけん引していきたい」と、ixrea(鹿児島市、イクシリア)の吉田浩司代表取締役は自らに言い聞かせるように語る。“BIM元年”から10年の節目を迎える中で「今後、設計の潮流はBIMになることは間違いない」と確信している。
独立から6年となり、東京を含め県外での仕事が増えている。「いまやBIMがなければ仕事を回せない」。愛用するBIMソフト『ARCHICAD』ではクラウドを活用したチームワーク機能があり、これによって「どこにいても設計を進められ、自らの働き方も自在に操れる」と強調する。
BIMの普及に合わせ、使い方もより高度化し、組織としてのBIM対応力も強く求められている。毎年のように新機能が盛り込まれ、使い勝手をしっかりと把握することも必要になっている。「スタッフの技術力を常に磨かなければ、事務所としてより効果的にBIMを使いこなすことはできない」と、教育面にも力を注いでいる。
取り組み始めたのは「BIM朝活」という勉強会だ。朝の30分間を使い、ARCHICADの新機能などを学んでいる。吉田氏が講師役を務め、スタッフにレクチャーし、その後に実践的な操作で感覚を養っている。日々のレクチャーを収録し、その動画を見ながらスタッフがいつでも復習できるようにもしている。朝活を始めたことで、スタッフ同士の情報共有も一気に進んだという。
従来の設計では施主との合意形成に必要不可欠であった模型も「いまではお願いされない限りつくることはない」というほど仕事のやり方も変わり始めている。同社は画面上でボリューム確認から細かなスタディーまでを行い、施主との情報共有もビューアソフト『BIMx』を活用するなど迅速にやり取りしている。
同社は東京と福岡に拠点を置いており、「1つのプロジェクトを各拠点から同時に進められるのもBIMの利点」と吉田氏は力を込める。だからこそスタッフのBIMスキルをより高い位置に保たなければ、設計事務所としての組織力を引き出すことはできない。現在の7人体制で同時に20ものプロジェクトを設計できているのも、BIMの成せる技だ。
吉田氏は「これからもチャンレンジしていく」としっかりと先を見据える。設計と施工ではまだデータ連携上の垣根があるだけに、実プロジェクトでの一気通貫BIMの実現にはまだ課題は多い。建築確認でのBIM活用を足掛かりに、さらなる一歩を踏み出そうとしている。同社の挑戦は始まったばかりだ。 (おわり・西原一仁)