【BIMつなぐ新たな潮流⑩】ソフト依存しないデータ連携時代へ 進化続けるクラウド基盤 | 建設通信新聞Digital

5月12日 日曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流⑩】ソフト依存しないデータ連携時代へ 進化続けるクラウド基盤

 清水建設が4日に発表したオートデスクとの戦略的提携に向けた覚書(MOU)締結は、建設ライフサイクルを通じてBIMデータを全方位で利活用する戦略が根底にある。同社はオートデスクのクラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)を全面採用し、デジタルコンストラクションの実現に向けた施工管理の最適化を目指す。

 建築設計分野では、今年1月に日建設計がオートデスクとの包括契約更新に合わせ、ACC製品群をCDE(共通データ環境)として採用することを表明した。清水建設の動きはゼネコンがACCを軸にオートデスクと交わした初のMOUとなる。他の大手クラスも本格導入を準備しており、一気にACCがBIMのクラウドプラットフォームとして広がろうとしている。

 11月にオートデスクが米国ラスベガスで開いたカンファレンス『Autodesk University2023』(AU)に参加した清水建設の三戸景資BIM推進部長は「最前線がBIMデータの調整をしなくてもいい環境が整えば、現場はもっとものづくりに集中できる」とACC導入への強い期待を持つ。飯田洋二生産計画部第3グループ長は「従来の図面ありきの考え方をどこまでマインドチェンジできるかがポイント」と焦点を絞り込む。

 AUに参加した竹中工務店の滝本秀明東京本店プロダクト部BIMグループ長は、自社がBIMソフトを限定しないオープンBIMを志向する中で、ACCがクラウドプラットフォームとして存在感を増すために「Revit以外の他のBIMソフトデータも読み込めることが本当の意味の全体最適につながる」と考えている。

 ACCにはプロジェクトデータを管理する基盤の『Docs』がある。そこにBIMデータはファイル形式として格納されるが、関係者間で作業を進める場合、従来のようなファイル単位のデータ連携では手間がかかる。必要な情報だけを抽出できる「粒状データ」化を図ることで、より快適な作業が実現する。それを可能にするのが今年5月に発表された最新プラットフォーム『Forma』である。

12月6日に東京都内で開かれたACC関連セミナーも会場を埋め尽くす盛況ぶり


 オートデスクでは自社の製品群だけでなく、他社のBIMソフトでも円滑にデータ連携ができるよう、データ構造の統一に向けた社内開発プロジェクトも進行中だ。既に自社製品のBIMソフト『Revit』と3次元製品設計ツール『Inventor』の粒状データ連携が完了し、ACCを介してドアや窓などのように個別部材データだけの受け渡しが可能になった。

 ACCの技術営業で最前線に立つ山根知治氏は「これからは他社製品も含めデスクトップアプリケーションに依存せずクラウドでデータを円滑にやり取りする時代が到来する」と説明する。そのためには蓄積するデータ自体が「(数値の概念をもつ)構造化されたデータであることが前提になる」と付け加える。同社が発表した最新テクノロジー『Autodesk AI』の実現にも、構造化データの蓄積が欠かせない。

 テクニカルセールス責任のブレント・ラモス氏は「データをつなぐ壁を取り払い、プロジェクト内のコミュニケーションを誘発化することがわれわれの使命」と語る。ACCのAI機能として先陣を切って導入される『Construction IQ』は蓄積されたデータを使って建設リスクを予測管理する。優良な構造化データの蓄積がBIMの可能性をさらに引き上げる。これはDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の基盤づくりにも通じる考え方だ。賢く使うためのクラウドプラットフォームが次代の扉を開くキーソリューションになろうとしている。

ACCの最前線を語るオートデスクのラモス氏と山根氏(左)



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