【BIMつなぐ新たな潮流①】豊かな「土壌」が多くの果実に データ育てるクラウド基盤 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流①】豊かな「土壌」が多くの果実に データ育てるクラウド基盤

 建設業のデジタル化は、どこに向かうべきか。建設ライフサイクルを通じて蓄積したデータを、クラウド上で賢く使う時代が到来している。先行する企業はBIMを出発点にDX(デジタルトランスフォーメーション)の領域に足を踏み出した。テクノロジーの進化により、データは個性を持ち始め、より多様な使い方が可能になる。BIMの潮流を浮き彫りにし、日本の建設業が進むべき道筋をたどった。

 「既に起きている未来」。オートデスクのアンドリュー・アナグノストCEOは11月に米国ラスベガスで開いた同社カンファレンス『Autodesk University2023』(AU)の参加者に向け、変革の波が目の前まで来ていることを強く訴えた。AUには世界各国から約1万人が集まり、日本からは200人を超え、過去最大の参加規模となった。

 ここで次代のプラットフォームテクノロジー『Autodesk AI』を発表した同社は、急速に進む建設業や製造業のデジタル化に向け、提供する全ての製品にAI(人工知能)を搭載することを宣言した。アナグノスト氏は「AIによって誰もが想像し得なかったことを実現できる変革をもたらす」と力を込める。

 同社がAI機能の開発に着手したのは10年前のことだ。これまでに60を超える査読付き論文を発表するなど、データのパターンや関係性を学習し、さまざまなコンテンツを提供する生成AIの開発に力を注いできた。AUの3日間で600を超えるセッションが組まれ、このうちAIに関連したセッションは50以上にも達した。

 先行して主軸製品の汎用(はんよう)CAD『AutoCAD2024』には既存の図面テキストの更新を自動で行う機能を搭載、今年5月にはAIベースの予測分析機能を備えた最新プラットフォーム『Forma』も発表した。ラジ・アラスCTO(最高技術責任者)は「セキュリティーとAIの倫理的な利用に向けた取り組みを通し、ユーザーのニーズに対応する責任のあるAIソリューションの提供に焦点を絞る」と強調する。

 同社が目指すのは建設ライフサイクルにおける「創造的探求」と「問題解決」であり、特に反復作業を自動化することで作業上のエラーを最小限に抑え、そこで得た時間を他の業務に回すというものだ。日本の建設業が目指す「生産性向上」と「働き方改革」に通じる考え方であり、作業の無駄を省き、成果を次工程につなぐ循環の流れを形づくろうとしている。

 建設分野を担当するニコラ・マンゴンAECバイスプレジデントは「AIを使って樹木に多くの果実を実らせるには豊かな土壌が何よりも重要」と強調する。土壌とは生産する過程で蓄積するデータであり、そのデータをいかに成長させながら効果的に使っていくかが、建設デジタル化の根幹になる。

 同社BIMソフト『Revit』のユーザーでは4割ほどが既にクラウドを使ってデータを出し入れしている。建設ライフサイクルを通じ、各プロセスで蓄積するデータを包括的にクラウド管理する流れは、世界的なトレンドになりつつある。

 この流れをけん引するキーソリューションとして、同社は2019年のAUで建設業向けの次世代クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)を発表した。4年の歳月を経て着実な浸透を遂げるACCは、設計や施工を担う受注者だけでなく、ビルオーナーやインフラ事業者など発注者側のプラットフォームとしても使われるようになった。蓄積したデータを賢く使うための枠組みとは何か。ACCの最前線を通してBIMの潮流を追う。

オートデスクはAU2023で『Autodesk AI』を発表



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