【BIMつなぐ新たな潮流③】インフラ事業者にCDE構築の流れ データ価値の最大化が重要 | 建設通信新聞Digital

5月12日 日曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流③】インフラ事業者にCDE構築の流れ データ価値の最大化が重要

 11月に米国・ラスベガスで開かれたオートデスクのコンファレンス『Autodesk University2023』(AU)では3日間で600を超えるセッションが組まれた。進展する次世代クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)の導入事例を紹介する関連セッションも数多くあった。

 ペルーの首都リマにあるリマ・ホルヘ・チャベス国際空港では、ペルー建設会社のCUMBRAグループがBIMデータの管理基盤にACCを全面導入した。プロジェクト関係者で錯綜(さくそう)する情報をリアルタイムに管理するため、CDE(共通データ環境)も整えた。BIMディレクターのヴィクトル・ヴェント氏は「CDEとBIMを組み合わせる効果は大きい。このプロジェクトは南米におけるACCのマイルストンになる」と力を込めた。

 米国ニューヨーク市で進行中のジョン・F・ケネディ国際空港新旅客ターミナルプロジェクトでは、オーストラリアのエンジニアリング会社RBGがプロジェクト関係者との情報共有に独自開発のデータプラットフォームを活用している。ダニエル・サンベル氏は4次元モデルによる生成、更新、提供のプロセスを説明した上で「いかに関係者間でデータの価値を最大化することができるが重要」と説明した。

 米国インディアナ州運輸省(INDOT)では、ACCの施工管理向けプラットフォーム『Build』を使い、企画から設計、調達、施工の各段階を管理している。プロジェクトマネジャーのダニー・コービン氏は「建設プロジェクトの改善と強化に力を注ぎ、リスクをより効果的に処理するためにスケジュール管理を重要視している。そこで3カ年のACCパイロットプロジェクトをスタートした」ことを明かした。

 JR東日本グループのセッションも、ACCの導入を見据えた内容となった。登壇したJR東日本コンサルタンツ(JRC)の小林三昭常務ICT事業本部長はBIMを軸に展開する鉄道DXの取り組み、JR東日本の石村隆敏建設工事部基盤戦略ユニットマネージャーは建設部門におけるDX戦略を紹介した。

 JR東日本グループでは調査・計画、設計、発注、施工、維持管理のサイクルを通じてBIMを活用する「JRE-BIM」を掲げ、JRCが構築したプラットフォーム「BIMクラウド」でプロジェクト関係者が情報共有を進めている。2020年5月にBIMガイドラインを発行したほか、電子納品・電子契約の本格導入、設計段階のBIM作成・点群取得原則化などの施策を展開するなど、着実にCDE(共通データ環境)の構築を進めている。

来場者があふれたJR東日本グループのセッション


 石村氏は「CDEにはクラウドのデータ共有が欠かせないことから、ACCの導入検討を進めている。AUによってわれわれの現在地を知ることができた」と話す。小林氏はJR各社でBIM導入が進展する中で「ワンチームとしてBIM活用を展開するプロジェクトがスタートしている」とし、「AUを教育の一環にも位置付け、社を挙げて参加した」ことも明かした。

 JRCからは、栗田敏寿取締役会長をはじめ22人が参加した。200人を超えた日本からの参加者のうち、同社が最大規模となった。セッションにはカタール建設省の担当者が聴講するなど、会場を埋め尽くす100人強の来場者が訪れた。モデレーターを務めたオートデスクの福地良彦アジア太平洋地域土木事業開発部統括部長は「JR東日本と同じように、海外のインフラ事業者はBIMデータ活用を進める上でCDE構築を目指している。国土交通省のBIM/CIM原則化がスタートし、日本も新たなステージに入る」と説明する。

JFK国際空港新旅客ターミナルプロジェクト(セッション資料から抜粋)



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