【BIMつなぐ新たな潮流⑤】蓄積データを賢く使う流れ鮮明 注目されたACCセッション | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流⑤】蓄積データを賢く使う流れ鮮明 注目されたACCセッション

 オートデスクのカンファレンス『Autodesk University2023』(AU)には、日本から200人超が訪れた。参加者数は過去最大となり、日本のBIM成熟度の進展が数字に表れた格好だ。ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタントに加え、今年1月に発足した設備BIM研究連絡会に加盟する設備工事会社、BIM導入が広がり始めた内装・ディスプレー業界からも参加があり、多彩な顔ぶれとなった。

 日本企業のセッションも組まれ、日建設計はモデリングツール『Rhinoceros』とクラウドプラットフォーム『Forma』の環境分析機能を使い、設計初期段階にCO2排出量を最適化する手法を解説、大林組はシンガポール自然保護区内の建設プロジェクト「マンダイ・バード・パーク」で取り組むリアリティーキャプチャーによるBIM活用事例を紹介し、いずれも多くの来場者を集めた。

設計初期におけるCO2排出量の 最適化手法を解説した日建設計


 AU開催期間中に組まれたセッションは600を数える。建設、製造、エンターテインメントの3分野にデジタルソリューションを展開するオートデスクにとって、建設分野はBIMをきっかけにデジタル化の波が押し寄せているだけに特に力を注いでおり、日本からのAU参加の大半も建設分野が占めた。参加者が注目する動きの一つが、次世代クラウドプラットフォーム「Autodesk Construction Cloud」(ACC)だ。

 ACCは2019年のAUで『BIM360』に変わる次世代のプラットフォームとして発表され、20年からグローバル展開がスタートした。日本語化を完了した22年4月から国内販売が本格化し、大手ゼネコンを中心に導入が着実に進んでいる。

 「AUではACCの情報収集を積極的に進めた」と語る美保テクノス(米子市)の野津健市社長は「刺激を受けてもらいたい」と2人の社員とともにAUに参加した。同社は地域建設業のBIMトップランナーとして、新社屋やPFI事業でフルBIMに挑み、国際規格ISO19650も認証取得済み。BIMワークフローの確立に向けてACCの導入にも踏み切った。北野哲也設計部係長は「最前線のACC活用はわれわれの方向性と一致していることを確認できた」と手応えを口にし、最新の建設デジタル化に触れた松本貴史建築部係長は「いよいよ建設現場にもAI(人工知能)が入ってくることへの期待を感じた」と振り返る。

 計3人を参加させた日本設計は、それぞれにミッションを与え、最新の情報収集に当たった。精力的に10セッションを聴講した吉原和正BIM支援グループ長は「手軽に情報共有できるACCは顧客との合意形成に有効であり、今年5月に発表されたFormaが実務でもかなり使えると確認できたことは大きな収穫だった」と、クラウドプラットフォームが潮流になっていることを強く感じた。

 AU2日目に開かれた大和ハウス工業のセッションも、ACC活用の先進的な導入事例として注目を集めた。社を挙げてBIM導入に踏み切った同社は各生産プロセスをつなぐCDE(共通データ環境)を構築に合わせ、ISO19650も認証取得し、設計から工場、施工までをつなぐBIMワークフローを確立しており、その基盤となるデータプラットフォームの検証を解説した。計7人がAUに参加した同社でBIMの先導役を担う宮内尊彰建設DX推進部次長は「来年の4月をめどに(BIM360から)ACCへの全面移行を考えている。現在はトライアルプロジェクトを進めており、当社独自のモデル承認を本格展開していく」と強調する。到来したBIMの新たなステージは、蓄積データを賢く使う時代に入ろうとしている。

大林組がBIM活用事例として紹介したシンガポールの マンダイ・バード・パーク(講演資料から抜粋)



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