海外でBIM原則化に乗り出す国の多くは、BIM情報管理の国際規格ISO19650を認証取得している。これはデジタル情報で建設プロセスを管理する規格であり、建設ライフサイクルを通じて建設段階のPIM(プロジェクト・インフォメーション・モデリング)と維持管理段階のAIM(アセット・インフォメーション・モデリング)で構成されている。
国際標準化機構(ISO)の要求事項として規定されているのが共通データ環境(CDE)の構築である。BIMモデル、図面、仕様書などの関連情報に加え、業務のワークフローを規定し、プロジェクト関係者間で情報を共有していくデータプラットフォームの枠組みを指す。データは企画、設計、施工、維持管理の段階を通じ、発注者、設計者、施工者、協力会社などの関係者が情報にアクセスしながら最新のデータを更新することから、CDEではクラウド管理が不可欠になる。そのキーソリューションとして注目されているのが、オートデスクのクラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)だ。
今年4月から直轄事業でBIM/CIMの原則導入に踏み切った国土交通省も、CDEの構築を強く意識している。8月に開いた第10回BIM/CIM推進委員会では「ISO19650と現行システムとの関係」についても考察し、データ管理の枠組みとして作業中、協議中、承認済み、アーカイブを設定している。これはCDEの要求項目に沿った区分けだ。
CDEのデータ管理で重要になるのは、情報を出し入れする部分であり、電子納品からアーカイブにデータを入れる部分についても更新した情報を戻せる双方向性が求められる。2025年までに生産性の2割向上を打ち出す日本にとっては、定量的な効果を示す必要性もあるだけに、CDEの流れに沿ってデータ管理を進めることが今後の道筋になる。
JRやNEXCOなど国内のインフラ事業者も、CDE導入の必要性を強く感じている。日本の公共事業では設計と施工の分離発注が原則となるが、近年は設計段階から施工者の意見を聞くECI(施工予定技術者事前協議)プロジェクトや、詳細設計付き施工発注方式など多様な発注方式が増えている。

ISO19650の枠組み
国土交通省直轄事業ではBIM/CIM原則化がスタートし、設計から施工、さらには維持管理まで含めてBIM/CIMデータを後工程に引き渡す流れがいずれ整う。導入が広がる詳細設計付き施工発注方式の場合、設計業務を担う建設コンサルタントにとっては、設計成果のデジタルデータをファイル単位で施工者に共有することに危惧している部分もあり、施工者が必要な部分だけをデータ単位で共有できる仕組みを求める声もある。
大容量のデータをインターネット経由でやり取りする時間的な大変さもあり、常に最新情報を更新しながら管理するためには、データをクラウド内に格納し、そこから必要な情報だけを出し入れするデータプラットフォームが有効になり、それを実現するためには情報の流れをあらかじめ規定するCDEの構築が不可欠になる。建設プロジェクトの関係者は多岐にわたり、誰が情報にアクセスできるか、権限を細かく規定する部分もCDEの基本的な項目だ。
ISO19650の要求事項を満たすことを証明するBIMカイトマークの認証は、ドバイ道路交通局の取得をきっかけに広がり、日本では21年2月の大和ハウス工業を出発点に建設会社を中心に認証が拡大している。認証企業の多くは11月に米国ラスベガスで開かれたオートデスクのカンファレンス『Autodesk University2023』に参加し、精力的に情報収集する姿があった。先行する海外のBIM導入企業ではCDE構築する流れが着実に広がっているからだ。

国土交通省第10回BIM/CIM推進委員会資料から抜粋した「ISO19650と現行システムとの関係」