【BIM/CIM原則化元年⑧】BIM/CIM原則化から義務化への道筋 オートデスク アジア太平洋地域土木事業開発部統括部長 福地良彦氏 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【BIM/CIM原則化元年⑧】BIM/CIM原則化から義務化への道筋 オートデスク アジア太平洋地域土木事業開発部統括部長 福地良彦氏

費用対効果を実感する流れ構築

福地良彦氏

 海外では先進国を中心に国としてBIMを原則化、義務化する動きが進んでいます。日本も今年からBIM/CIMの原則化に舵を切り、分かりやすく効果を実感できる3次元の可視化から始めることになりました。ドイツを例にすれば、日本と同じように国としてDXを推進しています。そのロードマップは可視化から、必要な情報を結びつける属性付与、そして自動化への流れを描いています。現在のドイツは可視化のフェーズから次の段階へと議論が進み、人でなくてもできる仕事は自動化やロボットにさせていく前提で計画が進んでいます。この取り組みは日本にとって、とても参考になります。

 BIMのROI(費用対効果)をみると、オーストラリアは建設業界の生産性が9%改善しました。米国の建設会社Holder ConstructionではBIMを活用した構造と設備の干渉チェックによってROIが3倍から5倍に拡大しました。米国連邦調達庁(GSA)では工種間調整だけで300%のROIを実現しています。

 BIMの義務化に乗り出す国のほぼ全ては、BIMで建設ライフサイクル全体の情報管理を行う国際規格のISO19650を参考にしています。本日のJR東日本様やNEXCO中日本様の講演でも共通データ環境(CDE)という言葉が出てきたように、CDEはISO19650のベースとなります。

 建設ライフサイクルは、建設段階のPIM(プロジェクト・インフォメーション・モデリング)と維持管理段階のAIM(アセット・インフォメーション・モデリング)で構成されます。ライフサイクルを通じて情報が積み上がる中で、発注者や事業者は各サイクルで明確な目的を定め、そのために情報の蓄積や活用の仕方をルール化することが重要です。

 CDEは、プロジェクト関係者が情報にアクセスする基盤であり、円滑に情報を出し入れするにはクラウドの管理が有効な手段になります。単純にファイルをアップロードするのではなく、ある程度の判断をクラウドシステム側でやらせる必要もあるでしょう。

 日本のBIM/CIM原則化は、幅広く取り組めるところからスタートしました。可視化効果を実感した後には、徐々にレベルを上げていく流れになり、受注者への要求レベルも高まることでしょう。最終的にはBIM/CIMで蓄積した情報を維持管理段階で活用することになり、そのために国はCDEの構築を進めていきたいという考えを持っていると私は分析しています。

 8月に開催された第10回BIM/CIM推進委員会で示された資料には、ISO19650と国交省の現行システムとの関係性を示す内容があります。データへのアクセスとして作業中、協議中、承認済、アーカイブを区分けしており、これはCDEの項目に沿ったものになります。

 BIM/CIMで無駄を省き、発注者は価値の高い業務に集中することが原則化の狙いの一つです。デジタル技術の活用によって計画外、想定外の事象が発生しても的確に迅速に対応ができることこそが、本当の意味でBIM/CIMの費用対効果を実感することだと思います。

ISO19650はCDEのベース



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