【東日本大震災】絶望から"復興の形"見えるまで 岩手・宮城・福島のいま | 建設通信新聞Digital

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【東日本大震災】絶望から“復興の形”見えるまで 岩手・宮城・福島のいま

着々と整備が進む気仙沼湾横断橋

 想像をはるかに超えた巨大地震と津波、原発事故という未曾有の複合災害となった東日本大震災から7年を迎える。道路や港湾、河川・海岸などの基幹インフラの復旧は年を追うごとに加速度的に進み、災害公営住宅の整備、土地区画整理事業などによるまちづくりも進捗したことで、復興の形がようやく見えつつある。がれきに埋め尽くされた被災地を見て、“絶望”という言葉しか浮かばなかったことが遠い過去のようにさえ思える。しかし、復興は道半ばであり、各地で工事がまだまだ続いている。インフラの復旧状況を中心に被災3県(岩手・宮城・福島)のいまを見る。

■岩手県
 岩手県内では、復興のリーディングプロジェクトに位置付けられている復興道路・復興支援道路の整備が、まさに“異例のスピード”で進んでいる。2011年11月に新規事業化された釜石花巻道路の「釜石~釜石西」が1年以内に着工する「即年着工」となったほか、その後も早期に工事着手。その原動力となったのが、工事着手前の川上分野のマネジメントに民間を活用する“事業促進PPP”と言える。
 17年11月には事業促進PPPが導入された三陸沿岸道路・山田宮古道路(14㎞)が、事業着手からわずか6年で開通。構造物関連では三陸沿岸道路で最長となる新鍬台トンネル(約3.3㎞)が16年10月、ことし1月には岩手県内最長の道路トンネルとなる新区界トンネル(約5㎞)がそれぞれ貫通した。
 今後さらに21日に宮古田老道路「田老真崎海岸IC~田老北IC」(4㎞)と田老岩泉道路「田老北IC~岩泉龍泉洞IC」(6㎞)が開通するほか、18年度中に釜石市と花巻市を結ぶ国道283号釜石花巻道路が全線供用する見通し。19年に釜石市で開催されるラグビーワールドカップ(W杯)を後押しする。
 県内に建設予定の災害公営住宅は、沿岸市域が203地区に5569戸、内陸部には12地区に303戸あり、計215地区5872戸となる。このうち、1月末時点で全体の86.0%に当たる177地区の5052戸が完成した。
 また、土地区画整理と防災集団移転促進、漁業集落防災機能強化の3事業による復興まちづくり(面的整備)をみると、計画している7476区画のすべてが着工済みで、3月末までに84.2%に当たる6292区画が完成する予定だ。
 これらの面的整備に当たっては、都市再生機構(UR)が中心となって「復興CM」という新たな手法を採用した。基本的な枠組みは、CMを活用した設計施工一括発注方式であり、自治体が総合調整業務をURに委託。URが自治体とCMRの間に入って複雑な契約手続きを肩代わりする形だ。自治体のマンパワー不足を補い、工期短縮やコスト縮減など多くの効果を発揮した。
 多重防御の要となる湾口防波堤は、17年3月に大船渡港の復旧が完了。震災前、世界最大水深(63m)の防波堤として、ギネス記録にも認定された釜石港の湾口防波堤も復旧が進み、いよいよ3月で事業完了を迎える。

■宮城県
 宮城県の復興は、震災復興計画の再生期を終えて18年度から発展期に入る。これまでの7年でインフラや住環境の整備は大きく進展した。
 15年3月、NEXCO東日本が常磐自動車道の全線を開通した。起点の埼玉県から終点の宮城県まで太平洋沿岸で結ぶ延長約343㎞の高速道路の一部は、現在、交通量の増加に伴い4車線化工事が行われている。県内では17年7月に山元IC~岩沼IC間の14㎞の工事が、20年度の完成を目指して着工した。
 東北地方整備局が整備を進める三陸沿岸道路では、気仙沼道路の主要構造物となる気仙沼湾横断橋の整備が進む。気仙沼市内を流れる大川河口部と気仙沼湾をまたいで架設される全長1344mの橋梁は、完成すれば青森ベイブリッジ(498m)を抜いて東北最長の斜張橋となる。14年7月の着工以来、橋台2基や橋脚12基の下部工が進められてきたが、3月末までにいずれも整備が完了する予定だ。今後は一部着手している上部工工事が本格化する。
 また、17年12月には南三陸海岸IC~歌津IC(4.2㎞)が開通し、南三陸道路(7.2㎞)が完成した。これにあわせて沿線の南三陸町では復興商店街が開業し、町の顔として地域の復興をけん引している。
 県内の離島部では、本土と島を結ぶ橋梁の架設が県主導で進む。17年10月に気仙沼市の本土と離島・大島を結ぶ大島架橋の本体架設工事が完了したほか、女川町と離島の出島を結ぶ出島架橋は、18年度から橋梁の詳細設計と上下部工を一括で整備に着手する予定だ。 
 県内21市町村で建設が予定される災害公営住宅は、1月末時点で計画戸数1万6072戸のうち95.6%に当たる1万5361戸が完成。3月中に完成率は96%に達する見通しで、全戸数の完成は18年度を予定している土地区画整理事業は1月時点で79.4%が完了している。
 県立学校では、農業高等学校と気仙沼向洋高等学校の2校の改築事業が3月中に完了し、4月から新たな校舎の供用が始まる。これで、すべての県立高校・特別支援学校の復旧が終了する見通しだ。
 交通や住環境の整備が順調に進む一方で、災害公営住宅や集団移転先では地域交流拠点施設の整備を通したコミュニティーの再生などが課題となっている。

■福島県
 福島県内では、東北地方整備局が県沿岸部を南北に貫く常磐自動車道と、内陸部の東北縦貫自動車道を東西に結ぶ相馬福島道路(約45㎞)の整備を推進。同道路最長のトンネルで、難工事が予想されていた塩手山トンネル(1801m)が2月に貫通し、全線開通に向けて大きく弾みを付けた。さらに10日には、相馬玉野~霊山両IC間約17㎞が開通する。
 一方、県は「ふくしま復興再生道路」として原発事故に伴う沿岸部の避難指示区域と主要都市を連結する8路線29工区(総延長約82.5㎞)を平成30年代前半までの完成を目指している。18日に開通する南相馬市と飯舘村を結ぶ八木沢トンネル(2345m)を含め、供用区間は15.9㎞となる。
 また、NEXCO東日本は、常磐自動車道の一部区間を4車線化するため、17年6月に福島県側(約27㎞)、7月には宮城県側(約14㎞)のII期線工事に着手した。復興・創生期間最終年度となる20年度までの完成を目指し、本線土木工事を概略設計の段階での発注のほか、入札手続きの簡素化などの取り組みにより、スピード感を持って事業を進めている。
 港湾関係では、今月に相馬港の沖防波堤(2730m)の復旧が完了し、18年度早期に完成式典を開催する予定だ。これで、県内すべての港湾の復旧を終えることになる。
 県内に建設する原子力災害による避難者向けの復興公営住宅は、計画戸数4890戸のうち、17年度末で96.3%に当たる4707戸が完成する見通し。
 また、沿岸部の新たな産業基盤の構築を目指す福島・イノベーションコースト構想の主要事業として、相馬市と浪江町内に整備するロボット・テストフィールドが、ことし2月から本格的に工事を開始している。同フィールドは、研究・開発・実証などの機能を備えた15施設からなる。20年度に開催する国際的なロボット競技会「ワールドロボットサミット」に間に合わせるため、設計と施工の各段階でそれぞれCM業務を発注し、事業の円滑な推進を図っている。

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