【地域建設業】「地域の守り手」どう維持する 「除雪体制」を指標に議論進む | 建設通信新聞Digital

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【地域建設業】「地域の守り手」どう維持する 「除雪体制」を指標に議論進む

 地域建設業の将来像を導く、産業行政の根幹ともいえる議論が、国土交通省の「建設産業政策会議」(座長・石原邦夫東京海上日動火災保険相談役)で進んでいる。検討のフィールドとなっているのは、本体会議の下に設置した「地域建設業ワーキンググループ」(座長・大橋弘東京大大学院経済学研究科教授)。地域の“守り手”をいかに維持していくか。今後の議論の着地点にも注目が集まる。 ターゲットとなる地域建設業は、経済活動を支えるインフラの整備や維持管理、災害対応など『地域の守り手』といえる存在。雇用という側面でみても、その維持や安定的な確保は、地域経済に欠かすことができない。
 しかし、10年後を見据えた「将来」ということでいえば、決して明るい材料ばかりではない。特に都市部に比べて建設工事あるいは建設市場に占める公共工事の割合が高い地方の建設企業は、そもそも公共投資の規模や増減に大きく左右される傾向が強い。
 人口減少や高齢化を背景に中長期的にみれば、確実視される国内需要の減少にどう向き合っていくべきか。公共投資が堅調な推移を見せているいまだからこそ、その将来像やあるべき姿を映し出しておく必要がある。

■除雪体制に行政が抱く危機感
 地域建設業を取り巻く現状や実態を掘り起こす上で、1つの“指標”となりそうなのが、市町村などの自治体と地域建設業が連携して行う「除雪」だ。
 災害はいつ起きるか分からないが、降雪がない年はない。地域建設業にとって除雪は、守り手として存在意義を発揮する重要な仕事といえる。
 ある行政関係者は「積雪寒冷地など、毎年のように除雪への体制確保が求められる自治体は、倒産や撤退による地域建設業の減少(守り手の不足)に気づきが早い」と話す。「除雪機械の更新を行うことができない企業やオペレーターが不足している会社が多い」「管内の除雪業者の確保に苦慮している」といった除雪体制に関する自治体の声は、地域建設業の減少による行政の危機意識を表す。

■パートナーの位置付け明確化
 解決策の一手として、議論の俎上(そじょう)に上っているのが、地域の安全・安心の確保など、いわば「公務」とも言える活動に献身的な協力を続けてきた建設企業への位置付けの付与。例えば、地域インフラ協力パートナーのような称号を与えることで、地域インフラの整備や維持管理を担う地域の“守り手”としての役割を明確化する。
 この位置付けを明確化することで、行政のパートナーであるという地域建設業の意識を喚起する。
 これまで産業行政の視点が薄かった市町村にも、産業行政への積極的な取り組みを促す。
 特に地方の建設業は基幹産業の1つ。行政が建設業の振興に積極的に取り組むことで、地域経済の活性化や雇用創出につなげる狙いもある。

■フレームワーク導入も選択肢
 焦点は、かねてから指摘されている安定的な事業量の確保だ。特に必要な地域企業の維持につながる「入札契約制度」のあり方も、地域建設業の将来を導く上で議論の着地点となる可能性が高い。
 受注機会の確保を念頭に置けば、EU(欧州連合)公共調達指令に規定する枠組協定などの海外事例も参考になる。『フレームワーク方式』と呼ばれるこの方式は、一定の期間内に行う複数の事業の施工者を、あらかじめ枠組合意した業者(フレームワーク企業)の中から選定する。
 競争性という面での課題はあるが、地域企業の役割が地域を支えるという「公務」に位置付けられるとすれば、除雪や維持管理といった特定の分野に限った価格競争によらない契約制度の導入も現実味を帯びてくる。

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