【ものづくり技術伝承】職人技を360度から撮る! AMATELUSが「SwipeVideo」を実証実験 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【ものづくり技術伝承】職人技を360度から撮る! AMATELUSが「SwipeVideo」を実証実験

 匠の技が丸見え--。埼玉県は、AMATELUS(東京都渋谷区、下城伸也代表取締役)が開発した「SwipeVideo(スワイプビデオ)」を使い、ものづくり技術を伝承するための実証実験を行った。熟練者の実技を360度方向から撮影し、自由な視点で視聴できるウェブ動画を制作。通常の一方向からの撮影では隠れてしまう反対側の手の動きなども含め、死角なしで職人技を見て学べる。

被写体を中心に360度のアングルで撮影、死角をなくす

 これまでも360度撮影する技術はあったが、撮影画像の処理や配信の負荷の高さから、ブラウザー上での再生は難しいとされていた。スワイプビデオは独自の変換・配信技術により、360度自由視点映像を体験できるようにした世界初の動画配信サービス。高価な機材やCG処理などは不要だ。
 ウェブの技術だけで動作するため専用アプリケーションがいらず、より手軽で安価なサービス提供を可能にした。格安SIMの通信速度でも、視聴者は任意のタイミングで再生中の映像をスムーズに切り替えられる。スワイプするだけで、人やモノを好きな角度から見られる。
 埼玉県は9月11日、効果的・効率的な行政サービスの提供を目的とする公民連携推進事業(通称Sai-Co-Lo=サイコロ)の一環として、スワイプビデオで、ものづくり技術を撮影する実証実験を県立熊谷高等技術専門校(熊谷市)で行った。県は、企業が持つ新技術の有用性や効果を、さまざまな場所や分野で検証する取り組みなどを展開。企業側にとっても、実際のフィールドで保有技術を試せる貴重な機会となっている。
 熊谷高技専では、自動車整備科、建築科、機械科それぞれの指導員による見本実技を撮影。建築大工の技能については、代表的な継ぎ手の1つである「腰掛け鎌継ぎ」の様子を映像に収めた。
 指導員を取り囲むように20台のスマートフォンを配置し、全方位からのこぎりやのみを巧みに操る手元をとらえた。スワイプビデオは、撮影後すぐ、ほぼリアルタイムで動画を視聴できるのも特長の1つだ。下城代表取締役によると、大手通信事業者などのサービスに比べ、配信容量を8分の1から10分の1程度に抑えられるという。
 今回はスマホのカメラを使い、360度アングルで撮る「バレットタイム」撮影を行ったが、技術の肝は変換・配信システムにあり、撮影方法やカメラ位置は問わない。例えば災害発生時に、ドローンで撮影した映像をこの技術で処理することにより、遠隔地にいる関係者を含めて、道路の被災状況などをスムーズに把握・共有できる。技能伝承や教育・指導、災害対応など、アイデア次第で使い道は無数に広がる。

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