【復興道路・復興支援道路整備】東北整備局 南三陸国道の担当区間が完了 7年で縦横軸54㎞開通 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【復興道路・復興支援道路整備】東北整備局 南三陸国道の担当区間が完了 7年で縦横軸54㎞開通

 東北地方整備局が、東日本大震災からの復興リーディングプロジェクトである復興道路・復興支援道路の整備を円滑に進めようと、2012年4月に岩手県釜石市に設置した南三陸国道事務所の担当区間が6月22日の釜石山田道路「釜石北IC~大槌IC」(4.8㎞)の開通をもって完了した。過半が新規事業化区間だったが、事業促進PPPなどの導入により、7年余りで縦横両軸約54㎞を開通させた。

安倍晋三首相も出席した釜石道路の開通式(2019年3月9日)

 岩手県内の沿岸を貫く三陸沿岸道路の整備は、三陸国道事務所(宮古市)が担当していたが、地域や関係機関との一層の連携により事業を確実に進めるため、震災翌年4月、釜石市鵜住居町に南三陸国道事務所が設置された。
 担当延長は54.1㎞で、事務所職員は総勢38人。初年度の事業費は前年度繰り越し分を含めると約400億円規模で、職員1人当たり10億円分の業務をこなす必要があった。
 釜石山田道路や吉浜道路などは震災前から事業化されていたものの、過半の約28㎞が11年度第3次補正予算で新規事業化となった区間であり、ほぼゼロからのスタートだった。
 初代所長を務めた柴田吉勝氏は「予算規模は大きかったが、10年足らずで全区間を開通させるのは難しいと思った。それでも地域に明るい話題を提供しようと、用地幅杭設置式を積極的に開催していた」と振り返る。

開所式で庁舎銘板を除幕した徳山日出男東北整備局長(右、当時)と柴田所長(左、同)(2012年4月9日)

 東北整備局は、復興道路・復興支援道路の早期完成に向けて、民間技術者チームと発注者チームが連携しながら事業進捗管理や関係機関との協議・調整などの業務を推進する「事業促進PPP」を導入した。
 南三陸国道事務所にも「陸前高田工区」(長大・ドーコン・ウヌマ地域総研・前田建設工業JV)、「吉浜釜石工区」(熊谷組・三井共同建設コンサルタント・公共用地補償機構・オリエンタル白石JV)、「釜石山田工区」(パシフィックコンサルタンツ・安藤ハザマ・不動テトラJV)の3工区に3JVが配置された。
 「事務所の職員だけでは手が回らない部分を用地や設計、施工の専門家が自ら動いて地元説明などをしてくれた。強力なマンパワーになった」(柴田氏)。
 地元の絶大な協力と事業促進PPPの導入などにより、事務所設置後約半年で釜石道路(6㎞)を新規事業化から1年以内に「即年着工」させた。その後、14年3月に高田道路(7.5㎞)、15年11月は吉浜道路(3.6㎞)が全線開通。16年10月には、三陸沿岸道路で最長の「新鍬台トンネル」(長さ3330m、施工・前田建設工業)が貫通した。
 さらに18年度は唐桑高田道路(岩手県内分8㎞)、吉浜釜石道路(14㎞)、釜石道路などが全線開通し、ことし6月22日の釜石山田道路が全線供用したことにより、同事務所が担当するすべての区間が完成した。
 釜石道路の開通により、釜石・花巻両市を東西につなぐ全長約80㎞の釜石花巻道路が全線供用。花巻空港や東北新幹線新花巻駅などの交通拠点と沿岸部が結節し、東北唯一のラグビーワールドカップ会場がある釜石市への観光促進、物流の強化による県内産業の活性化などが期待される。
 また、三陸沿岸道路は他事務所が担当した区間を含めると、宮城県気仙沼市から岩手県宮古市までの約106㎞が1本の自動車専用道路でつながった。
 開通効果は顕著に現れている。例えば吉浜道路では並行する国道45号の交通量が約7割減少し、通過交通の三陸道への転換がみられ、45号の安全性が向上した。
 陸前高田市役所から3次救急医療機関である岩手県立大船渡病院への所要時間は16分短縮された。救急搬送ルートは三陸道となり、患者の負担軽減や安定した輸送に寄与している。
 復興道路・復興支援道路約550㎞は、20年度までに全線が開通する見通し。今後は地域がこの道路を使ってどのように復興を進め、産業・経済の活性化や観光振興につなげていくかが注目される。

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