【ネットワークの信頼性向上】産業・観光振興を後押し 復興道路・復興支援道路の整備効果 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【ネットワークの信頼性向上】産業・観光振興を後押し 復興道路・復興支援道路の整備効果

 東日本大震災から10年の節目を迎えた。政府が復興のリーディングプロジェクトとして整備を進めてきた復興道路・復興支援道路は、3月末までに全体の95%が開通する予定だ。6日には復興道路の三陸沿岸道路「気仙沼IC~唐桑半島IC」(7.3㎞)の供用がスタートし、宮城県内の三陸道が全線開通した。復興道路・復興支援道路の整備効果を産業・観光振興や物流の効率化などの面から考える。

 6日の三陸道延伸により、仙台市内から気仙沼市を経由し、岩手県宮古市までの227kmが一本の道路で結ばれた。このうち仙台~気仙沼間は113㎞で、所要時間は震災前の2時間50分から約2時間に短縮。震災時の津波浸水区域をすべて回避しているほか、気仙沼市中心部から三陸道へ5カ所のアクセスが確保され、大規模災害時の救援活動を支援する。こうした災害時の代替性確保によるネットワークの信頼性向上が整備効果の一つだ。

6日に開通した気仙沼湾横断橋


 地域産業の支援効果も大きい。三陸沿岸の基幹産業である水産業・水産加工業は、震災により大きな被害を受けたが、三陸道の整備とともに出荷額が漸増し、2019年度は震災前の9割程度まで回復。気仙沼市内の水産加工会社からは「気仙沼港で原料を確保できない場合は、三陸道を利用して宮古市や釜石市からも広域的に仕入れている」といった声も聞かれる。

■物流効率化が企業進出支援
 道路整備による物流の効率化は企業進出を後押しする。岩手県沿岸南部地域では、復興支援道路の東北横断道釜石秋田線(釜石~花巻)と三陸道の整備に伴い、新規企業の立地や設備などの増設が増えている。また、釜石市では高速道路網の整備による商品流通のリスク軽減がイオンタウン釜石の進出を後押し、地元から全体の7割に当たる約430人の雇用を創出した。

 復興道路整備は、沿道開発の進展にも寄与している。宮城県内の被災地での復興まちづくり事業の6割以上が三陸道のICから約10分以内に整備され、高速道路による「コンパクト+ネットワーク」を実現。宮城県南三陸町では、三陸道の整備とあわせてIC周辺に役場庁舎や病院、住宅などが建設され、新たな町の玄関口として発展している。



■広域周遊観光に期待
 人口減少が進む被災自治体が大きな期待を寄せているのが、観光振興による経済活性化だ。三陸沿岸地域では震災伝承施設や観光拠点などが相次いで整備されているほか、気仙沼市は5月にスタートするNHK連続テレビ小説の舞台になっており、復興道路を使った広域周遊観光に期待が掛かる。6日に開通した東北最大の斜長橋・気仙沼湾横断橋(長さ1344m)も復興のシンボルとして観光資源になりそうだ。



■“命の道”で救急搬送
 1分1秒を争う救急医療でも大きな効果を発揮する。岩手県陸前高田市役所から3次救急医療機関の県立大船渡病院への所要時間は、三陸道の整備によって16分短縮された。救急搬送ルートが国道45号から三陸道に変更されたことにより安定輸送が可能となり、患者の救命や負担軽減にもつながっており、“命の道”としての役割を果たしている。

 復興道路・復興支援道路によってもたらされるさまざまなストック効果は、今後さらに被災地の真の復興を大きく後押しし、東北全体を強く元気につなげていく。



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