【BIM未来図】Arent×構造ソフト(上) 共に成長できる相手と組むM&A/二人三脚の"融和"が始まる | 建設通信新聞Digital

8月4日 月曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図】Arent×構造ソフト(上) 共に成長できる相手と組むM&A/二人三脚の“融和”が始まる

Arentが企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けて取り組む「アプリ連携型プラットフォーム」の構築が本格的に動き出した。業務ごとに最適な専門アプリケーションと手を組み、シームレスなデータ連携環境を実現することが狙い。1年前からM&A(企業の合併・買収)に乗り出し、これまでに3社をグループ化した。鴨林広軌社長は「本当にやりたかったことへの第一歩が踏み出せた」と手応えを口にする。初弾となる2025年1月に完全子会社化した構造ソフト(東京都北区)とは、早くも二人三脚による“融和”が始まろうとしている。

鴨林氏(左)と原氏


「ともに成長できる相手と手を組んでいく」。ファンドマネジャーとITエンジニアの経験を持つ鴨林氏は、19年4月のArent発足前からM&A戦略を準備してきた。敬愛する米国投資家ウォーレン・バフェットの言葉『素晴らしい会社を保有し続けることが一番の投資』が、その根幹にある。リストアップした建設系アプリケーションベンダーは100社ほどあり、その中で一貫構造計算ソフト『BUILD.一貫』と工程表作成ソフト『現場ナビ工程』を提供する構造ソフトは、一緒に仕事をしたいと熱望する「最上位の位置」にあった。

メインバンクを通じて構造ソフトの原泰紀社長にArentから連絡が入ったのは24年6月のことだ。毎日のようにM&Aのダイレクトメールなどが届く中で、原氏は「正式なルートから信頼ある形で相談を持ちかけられ、第一印象はとても良かった」と振り返る。話を聞くぐらいならとアポイントを受けたが、最初からトップ自らが訪問してくるとは思いもしなかった。対面した鴨林氏の柔らかな物言いと事業への熱い思いを聞き、「プレゼンテーション能力に長(た)けた感度の高い経営者で、何よりも一緒に仕事をしていきたいという本気度を強く感じた」と明かす。

デジタル化で多様な課題を解決


1983年7月創業の構造ソフトは、21年7月に原氏が経営のバトンを引き継いだ。創業者は「4番でピッチャー」の大黒柱的な経営者だった。事業継承にかかった資金を取り戻すことを優先し、利益重視の経営を心掛けてきた。「2代目の私はどこでも守れるオールラウンダー的な存在だった。無理をせず、ベストよりもベターを目指したソフトづくりを重視してきた」。業績は安定し、就任当初に掲げた利益目標も計画を上回る成果を出した。「さらなる成長に向けて次の一歩を踏み出そう」と考えていたタイミングで、M&Aの相談が舞い込んだ。

建築分野では、企業がBIMを出発点に蓄積したデータを利活用するDX戦略が広がり始め、26年春からはBIM確認申請も動き出す。「所員25人規模の当社がより上を目指すなら、BIMへの対応はもちろん、日々進化するAI技術も取り込む必要があるが、その当時のリソースでは限界があると感じていた」。原氏は悩みに悩んだ。経営のバトンを受けて3年で、M&Aに踏み切ることにも大きな葛藤があった。「ただ、将来を考えると、Arentと共に成長する選択肢が最適である」と決断した。

Arentグループに入ることは部長クラスに1カ月前、社内には24年12月13日の情報開示当日に伝えた。M&Aで退社した社員は誰一人いなかった。「さらなる成長を目指したい」という原氏の思いは、社員も同じであった。

Arentのアプリ連携プラットフォームで、構造ソフトの「現場ナビ工程」は建築プロセスの施工段階、「BUILD.一貫」は設計段階に当てはまる



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら