【BIM未来図】Arent×スタッグ(中)AIブースト開発が10件進行中/「申請くん」にアップデート版 | 建設通信新聞Digital

10月2日 木曜日

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【BIM未来図】Arent×スタッグ(中)AIブースト開発が10件進行中/「申請くん」にアップデート版

ArentではAI機能開発が活発に進


 Arentグループの一員となったスタッグ(横浜市)は、今秋から図面作成支援ツール『申請くんfシリーズ』にAI(人工知能)機能を搭載したアップデート版の提供に乗り出す。念願であったAI機能の実現はArentの技術力が下支えとなった。スタッグの石田泰三社長は「ユーザーの申請作業を効率することを常に突き詰めている。AIによって図面作成の作業時間を大幅に短縮できる。図面のベクトル化が解決できた点が大きかった」と手応えを口にする。

 アップデート版では、画像データやPDF・DXF図面上の壁線、敷地の認識による単線化、器具の自動認識・配置を可能にし、従来30分程度かかっていた作業を数分で完了できるようになる。上下水道分野の建築図面はCADデータやPDFデータだけでなく、紙図面を提供されるケースもある。これまで給排水設備業者などのユーザーは、申請作業の中で図面の洗い出しに時間をかけていた場面も多かった。

 Arentの鴨林広軌社長は「人間の目で線として認識しても、画像としては点(ドット)の集まりであり、コンピューターもそう認識する。線分への変換を実現したことで、それが何を指すかを認識できるようになり、自動化が一気に進んだ」と付け加える。申請くんfシリーズのケースのようにArentでは、グループ会社のアプリケーションにAIを組み込むことで操作性を格段に高める『AIブースト戦略』を積極展開している。「現在は自社製品も含めれば10件を超える開発プロジェクトが進行中」と明かす。

 スタッグは、申請くんfシリーズへの自動化機能をさらに拡充していく計画だ。「AIの効果を見いだせる部分があれば積極的に実現していく。今後はサポート領域にも踏み込んでいきたい」と強調する石田氏は、先行するようにマニュアル機能の強化に乗り出している。申請くんfシリーズの強みはパソコン初心者でも扱える直感的な操作性と、左クリック中心で図面が作成できる扱いやすさだが、「画面上に自動で次の操作を指し示すような仕掛けを拡充できれば、より使い勝手が増す」と考えている。

AIによって30分の作業が数分に短縮


 その背景には「サポート部門の業務軽減にもつながる」との狙いがある。スタッグは申請くんfシリーズの開発から営業、サポートまで一貫して対応している。ユーザーは累計で3000社を超え、問い合わせのフリーダイヤルは日々鳴りやむことがない。作業時の細かな進め方など操作上の相談が大半を占める。申請くんfシリーズは図面から自動で水理計算ができるが、その基準は自治体によって異なる。「そうした部分にまで丁寧に相談に乗っている。画面に操作上のテクニックまで含めたマニュアル対応が実現できれば、サポート部門への相談も減り、より円滑な業務が実現できる」との期待からだ。

 Arentが目指す「アプリ連携型プラットフォーム」は、建設生産プロセスの業務ごとに最適な専門アプリケーションと手を組むことで、シームレスなデータ連携環境を実現し、多様化する建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の要求に対応する。今年1月に構造ソフト(東京都北区)、3月にPlantStream(同港区)、そして7月にスタッグが新たに加わった。

 鴨林氏は「当社は各グループ会社からの相談を受け、システムの開発や営業の支援を進める下支え役となる。各社の企業文化を尊重し、経営に口を出すことはない。外付けでわれわれがグループ会社を支援していくことが、グループの強みを最大限に発揮できる最良の選択である」と確信している。

 

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