【BIMつなぐ新たな潮流⑨】BIM確認申請に高まる期待感 3D自動生成技術も登場 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIMつなぐ新たな潮流⑨】BIM確認申請に高まる期待感 3D自動生成技術も登場

 2023年は、国土交通省にとっての「BIM/CIM原則化元年」となった。この流れに合わせるかのように建築分野のBIM普及を後押しする取り組みとして、設計や施工段階のモデル作成費用を補助する建築BIM加速化事業もスタートした。官民一体の建築BIM推進会議では4月に建築確認関連の新たなロードマップが示され、BIMデータによる確認申請を25年度から試行することを盛り込んだ。

日本におけるBIMと確認申請の動き(建築BIM推進会議資料より抜粋)


 BIMは、日本国内で注目された09年のBIM元年を出発点に、大手の建築設計事務所やゼネコンがけん引する形で進展してきたが、建築確認申請が2次元図面を前提としているため、BIM普及のボトルネックになっていた。これまで意匠設計部門のBIM導入が先行していたものの、確認申請が対応していないため、設計全体を通してBIMを活用できないジレンマがあった。各社のBIM推進役にとって、25年度から試行されるBIM申請に対する期待は大きい。加速化事業に乗り出し、BIM普及を後押しする国交省にとっても思いは同じだ。

 米国マサチューセッツ州ビバリーに本社を置くWINDOVER Constructionが確立した2次元図面を3次元モデルに自動生成する技術は「日本におけるBIM申請の枠組みを考える上で貴重な取り組みになる」と注視する日本側の関係者が少なくない。同社のソリューションは反復プロセスによって複雑な形状を具現化するジェネレーティブデザインの手法を利用したもので、2次元データを3次元データに短時間で自動生成する。BIM確認申請に乗り出した国への技術提供もスタートした。

 アムル・ラーファトCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)は「親密なパートナーであるオートデスクのテクノロジーがあったからこそ実現した」と強調する。BIM確認申請は世界各国で拡大傾向にあるものの、従来の2次元申請を継続する企業が減らないことから、2次元と3次元の申請を並行して受け付けるケースも多い。「そうした状況にも柔軟に対応できる」と手応えを口にする。

 同社は、建設ライフサイクルを通してBIMを最大限に活用するため、オートデスクのクラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)を全面導入している。蓄積したデータをいかに賢く使うかを常に考えながら、それを実現する独自のソリューションを展開している。3次元への変換技術もその一つだ。スチュアート・ミューラーCEOは「当社は同じ価値観を持つパートナーを常に探している。お互いの強みを発揮したコラボレーションによってBIMの価値を最大化し、顧客に貢献していきたい」と力を込める。

WINDOVER ConstructionのミューラーCEO(左)とラーファトCIO


 このように米国では、BIMを出発点にDX(デジタルトランスフォーメーション)の領域に踏み込み、業容拡大や新ビジネスの創出に乗り出す企業が増えている。BIMデータの作成に注力していた時代から、データを有効に活用する時代へとステージが上がっている。日本でもBIMを通過点にDXの取り組みを加速するため、ACCの全面導入にかじを切る動きが広がり始めた。17年のBIM導入からわずか5年でBIMの定着を図った大和ハウス工業はACCを基盤にデータを蓄積し、DX戦略のさらに進展を図る。これに続くように今月に入って、大手ゼネコンにもACCを本格導入する動きが出てきた。

クラウド基盤を担うACC



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら