【BIM2022】標準化の拡大に追い風 人材教育で業界前進 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【BIM2022】標準化の拡大に追い風 人材教育で業界前進

 
 国土交通省の建築BIM推進会議や建設関係団体によるガイドラインや標準ワークフローの検討が加速し、BIMを基本とした新たな建設生産システムの構築に追い風が吹いている。統一的な活用が拡大することで生産性向上の道すじが明らかになり、使い方に迷うことなくBIMを導入しやすくなるため、人材教育を推進する環境が整ってきた。人材を拡充することで、日本の建設業界の前進につながることが期待される。本特集では建設業界のBIM推進を担う72人のキーマンにBIM教育を展望してもらうとともに、建設生産システムのあらゆる工程で実装が進むBIMの最前線を紹介する。

情報をデザイン 次世代BIM実現
日本設計代表取締役社長 篠崎淳氏、日本設計取締役専務執行役員 岡本尚俊氏 

篠崎社長(左)と岡本専務


 日本設計は、次世代BIMの実現を目指し、“社会インフラ”としてのBIM標準化や建物の付加価値向上の取り組みを加速している。篠崎淳社長と、建築BIM推進会議や建築家協会(JIA)でBBIM標準化を推進する岡本尚俊専務に今後のBIMの方向性を聞いた。

--BIMの現状をどう捉えますか
 篠崎 1社単独で生産性を上げるツールではなく、“社会インフラ”としての機能を重視しています。国土交通省の建築BIM推進会議を始め標準化に向けた活動も進み、BIMは「実装」のフェーズに入りました。重要なことは設計データが施工、建物維持管理で使う情報伝達ツールとして成熟してきたことであり、共通認識を持って取り組むことが大切です。
 推進会議や建築設計3会による標準ガイドラインも発表されました。言うなればBIMを運用する最も根源的なルールであり、共通理解に向けた成果の第1弾です。実践ベースに落とし込み、社会的なシステムの進化と並行して発展させる必要があります。

--設計実務にBIMが与える影響は
 篠崎 社内では2つの概念を使い分けています。1つは社会インフラとしてのBIMです。もう1つは日本設計が独自の開発を行い、技術力や創造性を発揮し、建物の付加価値を増やすためのコンピュテーショナルデザインです。
 岡本 建築設計3会、推進会議がガイドラインを発表し、国交省営繕部もガイドラインを改定するなど、この3年間で標準化が一気に進みました。日本建設業連合会も施工BIMガイドラインを作成するなどそれぞれの分野でガイドラインがありますが、推進会議を通じて一つひとつ連携し始めています。
 篠崎 BIMを扱う上で最も重要なのが情報の活用です。社内では、3次元モデリングを中心にするのではなく、情報フォーマットをデザインする考え方でBIMを運用する方式にシフトしました。これにより情報連携の概念がクリアになり、より広い連携につながります。

--社員教育にはどのように取り組んでいますか
 岡本 研修マニュアルは以前から整備しており、5、6年前から新入社員にBIMを研修しています。ワークフローに合わせた研修も行い、多くの社員がBIMを扱えるようになりました。今後は実プロジェクトで実績を積むことを重視しています。
 篠崎 一方、設計を通じて生成される情報を構築するのは、ベテランの経験が生きます。ソフトを上手に操作するよりも、BIMの仕組みを知り、情報を整理する方法を知ってほしいと思います。モデリングではなく、データベースの構成が重要です。

--BIMの普及による建設産業の将来像は
 岡本 非競争領域として業界をボトムアップし、社会インフラとしてのフェーズに入る必要があります。カーボンニュートラルの達成に向け、エネルギー消費とBIMがリンクした取り組みも進むでしょう。
 篠崎 その時々の社会的な課題をデータ化し、落とし込んで問題解決するプラットフォームになることを期待します。産学官で着実に歩みを進めることが重要です。

◆「実装」が進む建設業界の最前線を展望

『建築・BIMの教科書』
発行=日刊建設通信新聞社 BIM教育研究会編著/定価3600円(税別)、B5判・312ページ

 本書は、BIMを基礎から学び、その成り立ちや技術を理解するためのガイドブックです。
 BIMは、CADの延長線上のツールではなく、建設情報と3次元モデルを融合した新しい建設生産の仕組みであり、ひいては建物の経営戦略ツールにすることで維持管理や資産管理、エネルギーマネジメントに役立つことが期待されています。そんなBIMを基礎からていねいに解説します。また、BIM教育機構のオンラインによる「BIM基礎知識診断テスト」や、大学の建築学部でも採用されており、建物の事業計画から設計、施工、維持管理の関係者におすすめの一冊です。
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