【記者座談会】熊本県知事が川辺川ダム建設を容認/DX推進へ建コン協が提言 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【記者座談会】熊本県知事が川辺川ダム建設を容認/DX推進へ建コン協が提言

A 熊本県の蒲島郁夫知事が川辺川へのダム建設を容認したね。2008年に自身の「白紙撤回」から方針の転換となる。
B 民意は「命と環境の両立」として、現行の貯留型の川辺川ダム計画の完全な廃止と、環境に配慮した新たな流水型のダム建設を国に要望した。19日の知事表明翌日には赤羽一嘉国土交通相に考えを伝えた。
C 水質日本一と言われる清流川辺川は息をのむ美しさだ。ダム建設によりそれが損なわれるという懸念は当然ある。当時の白紙撤回は前向きな判断だったと個人的には評価している。
D しかし20年7月豪雨が発生してしまった。この12年で抜本的な対策を講じていれば救われた命があったかもしれず、知事が言う「命」の問題を突きつけられた。被災経験により民意が変わったというわけだ。
B 民意の変化を主張とすると責任転嫁のように映るが、知事は表明後の記者会見で、「信念を持って決断したことを変えるのはつらいこと。しかし、県民にとって一番いい判断をすることが大事だ」と自身の政治決断の思いを語っていた。
A 県が24日に策定した復旧・復興プランにも流水型ダム推進は抜本的な対策として位置付けられた。今後の展開は。
B 20年度内にまとめる球磨川流域治水プロジェクトで、ダムの規模など治水能力を示す見通しだ。
C 流水型ダムにして、治水による安全・安心の確保と環境への配慮は可能だろうか。
D 国による熊本地震の早期の復旧・復興を目の当たりにした知事は、「国土交通省の技術を信頼している」と言っている。国交省には周囲を納得する計画を打ち出してほしい。
B 国交省の流域治水に環境の取り組みを付加した「緑の流域治水」を県は掲げている。この取り組みが今後の流域治水のモデルになればと思う。

蒲島知事は記者会見で、「県民にとって一番いい判断をすることが大事だ」と語った

◆実装化へ本質理解深める契機に

A ところで建設コンサルタンツ協会の高野登会長が、建設生産システム全体の効率化や生産性向上につながるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について積極提言していく姿勢を明らかにした。
E 先に同協会内部のシンクタンク組織であるインフラストラクチャー研究所がコロナ後の「新しい社会」とこれを支える「社会インフラ」について、インフラに関わる技術者の視点から広く社会に提言しようと中間報告として発表した。今回のDXに関する提言も同様に発注者、行政を含む建設産業界としてどうあるべきかを議論し広く世に問う形で発信していくことをイメージしているようだ。
F 個社のレベルでは多くの建設コンサル会社がDXの推進を重要な経営課題に位置付けて積極投資しており、さまざまな形で事業展開している。3次元化技術やAI(人工知能)の目覚ましい進展によるビッグデータ解析などによって、複雑化する社会課題に対応した新たなソリューションや従来の枠組みを超えた多様な協業・連携につながっているのは確かだ。一方で建設産業全体を見渡したときにデジタル革新によって仕事のプロセスや生産効率あるいは生産品質がどう変わるかというといま一つ見えてこない気もする。
E DXという言葉だけが踊っているというか先走りしている面はある。資金や人材が豊富な会社だけが建設産業の担い手ではないし、むしろ大多数は中小企業であり発注者も基礎自治体だ。同床異夢に陥ることなく、歩調を合わせながら本質理解を深めていく。そうしたまさに実体を伴う実装化に向けた議論が深まることを期待したいね。

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