【建築家の役割を共有】「JIA・SDGs建築フォーラム2021」プレフォーラム オンライン開催 | 建設通信新聞Digital

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【建築家の役割を共有】「JIA・SDGs建築フォーラム2021」プレフォーラム オンライン開催

 日本建築家協会(JIA、六鹿正治会長)は13日、6月に都内で開く「JIA・SDGs(持続可能な開発目標)建築フォーラム2021」のプレフォーラムをオンライン形式で開いた。災害対策、環境、保存再生、まちづくりの4つの全国会議の活動指針などを通じ、目標達成に向けて建築家が果たすべき役割を共有、発信した。六鹿会長は、「すべての目標を建築でダイレクトに達成できるわけではないが、それぞれの部分で貢献できる可能性がある。思考と議論と実践を展開していきたい」と力を込めた。

 冒頭、JIA・SDGs建築フォーラム実行委員会の上浪寛委員長は、「SDGsを共通言語に建築と社会のつながりをより強化すべき。議論を通して果たすべき役割を共有したい」とあいさつした。

 引き続き、4つの会議の議長が活動指針などを報告した。災害対策会議の内野輝明議長は、東日本大震災後の建築分野の取り組みを振り返った上で、災害前に何をするかを考えておく「事前復興」の必要性について触れ、「災害を常に建築の条件として考えておかなくてはならない」と強調した。

 環境会議の袴田嘉夫議長は、壊さず、ごみを出さず、直して使い続ける建築の長寿命化がSDGsにも貢献するとし、時代を超えて陳腐化しない意匠や改修技術の提案などで建築家が果たすべき役割は大きいとの見解を示した。

 保存再生会議の金山眞人議長は、「SDGsと保存再生は親和性があるが、考慮すべき点もある」とし、改修に際してのオーセンティシティー(真正性)の確保などを課題に挙げた。さまざまな課題の解決には、多方面の専門家との協働が必要と指摘した。

 まちづくり会議の亀井尚志議長は、JIAがアドバイザー業務を担った「きた住まいるヴィレッジ」などの事例とSDGsの関係性を説明した。

 各会議の報告に続き、フォーラム実行委員会委員の今村創平氏、所千夏氏と議長4人がSDGsで建築家が果たすべき役割について討論した。

 内野議長は、「満たされている者が、満たされていない者を引き上げるという視点で取り組むべきではない」とし、袴田議長は「住宅を長寿命化するだけでもSDGsに貢献する。少しでも、もったいないをなくしていくことを職能の根っこに持ち合わせることが大事だと思う」との考えを示した。

 金山議長は、「極めて重要な建物だけが保存されるのではなく、長寿命化のすそ野を広げていくことが大事だ」と、持続可能な社会に向けて建物の長寿命化を基本にすべきと主張した。亀井議長は、「いまの日本で急いで取り組まなければならないのは防災まちづくり。危険な場所から安全な場所に移住するには経済的に解決できない部分もある」とした上で、防災の観点からみた移住システムの必要性を指摘した。

 所氏は、「きょうは4つの会議の議長に協力してもらったが、それ以外の活動をしている方々もたくさんいる。6月のフォーラムに向けてさまざまなことを考えていきたい」と述べた。

 今村氏は、高度経済成長期、バブル崩壊後のこの30年間で多くの災害に見舞われ、「次のフェーズに移行しているのに、われわれはマインドが転換できていない部分もある」とした上で、「SDGsをきっかけに、いかに社会と向き合っていくかが求められている」と締めくくった。

 JIA・SDGs建築フォーラム2021は「建築家の貢献-2030年に向けての役割-」をテーマに6月25日に東京都渋谷区の国連大学で開き、オンラインで配信する。



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