【記者座談会】SDGs対応/JIA日本建築大賞 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【記者座談会】SDGs対応/JIA日本建築大賞

A 2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)への対応が、建築界でも活発化しているね。

B 日本建築学会は9日、良好な社会ストックの維持活用、気候危機・地震を始めとする災害対応と脱炭素社会など7つの行動方針を盛り込んだ、「SDGs建築行動宣言」を公表した。SDGsの17の目標のうち、「住み続けられるまちづくり」「つくる責任・つかう責任」を中心に、良好な社会ストックの維持活用、気候危機・地震などの災害対応と脱炭素社会、建築とまちづくり教育などの取り組みを展開する。

C 活動の実施状況は研究、教育、実践で随時確認するとともに、主要成果評価指標(KPI)を作成して、定期的に達成状況を検証するのも大きな特徴だ。気候変動を含む地球環境破壊や、新型コロナウイルスの世界的流行など、社会経済活動が危機的な状況に直面している中、「建築の力」で積極的・革新的な行動を推進する意気込みを感じる。

D SDGsを巡っては、19年10月に日本建築家協会(JIA)が、日本の建築家が設計した国内の建築や活動の50事例を集め、SDGsと建築の関係について具体的に解説した、『SDGs建築ガイド日本版』を作成している。JIAは20年にSDGsフォーラムの開催を予定していたがコロナ禍で延期となり、ことしの6月に改めてフォーラムを開く。

B 13日にはオンライン形式でプレフォーラムが開かれ、災害対策、環境、保存再生、まちづくりの4つの全国会議の活動指針などを通じ、SDGsの目標達成に向けて建築家が果たすべき役割を共有した。JIAの六鹿正治会長は、「すべての目標を建築でダイレクトに達成できるわけではないが、それぞれの部分で貢献できる可能性がある。思考と議論と実践を展開していきたい」と強調していた。「誰一人取り残さない」社会の実現に建築家が果たすべき役割は大きい。

14日にJIAが都内で開いた20年度優秀建築選の最終審査会で、応募があった275作品の中から「京都市美術館(通称・京都市京セラ美術館)」が大賞に選ばれた

◆保存再生の受賞で評価軸の転換点に

A 話は変わるけど、プレフォーラムの翌14日に、JIAが20年度優秀建築選の最終審査会を開いた。

E JIA日本建築大賞には、青木淳氏(AS)、西澤徹夫氏(西澤徹夫建築事務所)、森本貞一氏(松村組大阪本店)、久保岳氏(昭和設計)の「京都市美術館(通称・京都市京セラ美術館)」が輝いた。保存再生カテゴリーでの大賞受賞は、10年度の「犬島アートプロジェクト『精錬所』」以来10年ぶり。建築界でSDGsへの取り組みが活発化する中、応募があった275作品から既存ストックを活用・再生して新たな価値を生み出した京都市美術館が大賞に選定されたことは、今後の建築家の役割を考える上でも象徴的といえる。

F 審査会では、現地審査の対象となった5作品の設計者がオンラインでプレゼンテーションし、最終的に3作品に絞り込んだ上で大賞を決めた。京都市美術館に対して審査委員からは、「この先、日本が取り組まなければならないことを建築を通して見せてくれている」「時代性は大事。建築家に求められている要請に応えた作品が大賞になったことは大きな意義がある」などの意見が上がっていた。

A 新築を含めた多数の作品の中から、保存再生プロジェクトが最高峰に選ばれたことは変革する時代の反映ととらえることもできる。「近代建築の保存再生で1つ突き抜けた」と評価された京都市美術館の大賞受賞は、さまざまな建築賞の評価軸にも影響を与える1つの転換点になるかもしれない。



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