【記者座談会】リニア静岡区間の環境保全で提言/上限規制対応へ下請け団体が要望 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【記者座談会】リニア静岡区間の環境保全で提言/上限規制対応へ下請け団体が要望

◇実務者レベルで詰めの議論入り

A リニア中央新幹線静岡工区に関する議論でいくつか進展があったみたいだね。国土交通省の有識者会議が、環境保全に関する提言などを盛り込んだ報告書をまとめた。どんな内容だろう。

B 報告書では、トンネル掘削による南アルプスの環境への影響と対策として、▽沢の水生生物▽高標高部の植生▽地上部分の改変箇所の環境–の3点について、JR東海が講じる対策を整理した。斉藤鉄夫国土交通相は8日、JR東海の丹羽俊介社長に対し、報告書に基づいて、同工区トンネル掘削工事の環境保全対策を適切に実施するよう要請した。

C 今回の取りまとめにより、トンネル掘削工事の着手を認めていない静岡県が懸念を示していた「水資源」と「環境保全」の両議論が国側で終了したことになる。

A 報告書への反応は。

B 丹羽社長は12日の定例会見で「まずは、報告書に基づいた今後の進め方を静岡県や静岡市と実務レベルで意見交換を始めていきたい」と述べた。一方、静岡県の川勝平太知事は13日の会見で「(報告書の内容は)非常に分かりやすい」と評価しつつも、「沢周辺の生態系について、有識者会議では十分に議論されていない」として、専門部会で対話を続けていく方針だ。

C このほか、JR東海が水資源保全の解決策として示す「田代ダム案」についても11月29日、大井川利水関係協議会の事務局である静岡県が「了解した」とJR東海側に通知した。ただ、「未決定事項については専門部会で対話すること」とし、引き続きの議論を求めている。

B 川勝知事が着工を認める見通しはいまだに立っていない。建設的な議論を重ね、解決に向かってほしいね。

静岡区間の早期問題解決が待たれるリニア中央新幹線

◇サプライチェーン全体で最適化

A 「2024年問題」への対応が、いよいよ最終局面に入ってきた。各業界団体の動きも慌ただしくなってきているようだね。

B まず、おさらいしておこうと思うけど、日本建設業連合会が7月に打ち出した「適正工期確保宣言」は非常にインパクトがあった。条件の厳しい民間建築を対象とした宣言で、会員各社は4週8閉所・週40時間稼働を原則として初回の見積もりを出す。

A 日建連や全国建設業協会の会員は、建設工事の元請け受注者として、発注者に理解を求める活動を積極的に展開してきたが、ゼネコンを頂点とする施工体系のピラミッドの中では発注者でもある。

C 24年問題を契機に、建設工事に関係するサプライヤーの間で、旧来の商慣習を見直そうという動きが活発化してきた。日本機械土工協会は11日、2次下請けとして建設発生土の運搬業務を担うダンプトラック企業の経営改善を目的に、国交省や元請け団体などへの要望活動を行った。1m3当たりいくらで契約していた業界慣行を見直し、公的単価などから積算した適正な運搬価格を2次下請けに支払えるようにするという。

D 全国コンクリート圧送事業団体連合会も11月に、日建連、全建に加盟するゼネコンの本支店1000カ所超に施工計画での配慮を求める要望書を送った。自社から現場へコンクリートポンプ車を回送して作業開始まで待機する時間や、打設終了からポンプ車内に残ったコンクリートを洗浄して会社に戻るまでの時間などへの配慮を求めた。

B 空調衛生設備や電気設備の業界団体も、原則4週8閉所化などを要望していたね。どこかにしわ寄せが行くことなく、サプライチェーン全体で適正化が進まなければ、建設産業全体の持続可能性は確保できない。

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