【BIMつなぐ新たな潮流⑦】双方向のデータ活用が価値共有に 見積時間3割削減事例も | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流⑦】双方向のデータ活用が価値共有に 見積時間3割削減事例も

 オートデスクが『Autodesk Construction Cloud』(ACC)の販売を本格化したのは2020年に入ってからだ。既に建設分野で定着する『BIM360』に代わる次世代クラウドプラットフォームに位置付け、既存ユーザーにはACCへの移行を促している。

 米国でも先行してACC導入に踏み切った総合建設会社のDPR社は、所員7000人とともに協力会社2万7000人も含め、ACCの中でBIMモデル、図面、関連情報全てを一元管理している。プロジェクトごとに関係者が必要な情報にアクセスする双方向のデータ活用が実現しているという。

 オートデスクでテクニカルセールスの責任者を務めるブレント・ラモス氏は「導入企業の多くはとてもエキサイティングにACCを活用している」と手応えを口にする。同社は建設プロジェクトのBIM高度化に伴うデータ大容量化に対応するためにビューア機能を強化し、アップロード速度を従来の5倍以上に高めるなど、これまでに630を超える新機能を追加し、業界の変革を捉えながらユーザーからの要望をACCに反映し続けている。

 ACCは、プロジェクトデータを管理する『Docs』を基盤に置き、業務別に三つのクラウドシステムで構成している。その中で2次元と3次元の数量拾い機能を組み合わせ、業務を簡素化できるクラウドベースソリューションの『Takeoff』では、単価情報をデータとして持たせ、コスト管理も簡単にできるようになった。

 このTakeoffを効果的に使う建設会社の一つが、米国マサチューセッツ州ビバリーに本社を置くWINDOVER Constructionだ。2次元や3次元のいずれにも対応するTakeoffの数量拾い機能により、従来の見積時に発生していた手戻りを解消し、全体の見積時間を30%以上削減している。

 同社のスチュアート・ミューラーCEOは「わが社のコアバリューは社員一人ひとりが常にイノベーションを考え、最善のテクノロジーにトライしていくことであり、その価値をプロジェクト関係者間で共有することを心掛けている」と強調する。設計から施工、維持管理までの建設ライフサイクル全体を見据える同社では常にBIMソフト『Revit』から業務がスタートするという。作成したBIMモデルをつなぎ、業務に応じて最適なデータ活用を推し進める。そのプラットフォームとしてACCを位置付けている。

ACCはリリース以降、630超の新機能を追加


 08年に地元ビバリーにあるエンディコット大学と提携した同社は、大学のパートナーとして、関連施設の建設や維持管理を一手に引き受けており、これまでに23ものプロジェクトを手掛けている。建築物の主要部分を工場生産し、ユニット単位で現場運搬して取り付けるモジュール建築を得意とする同社はドローンで取得した現況の点群データと、BIMの計画モデルを重ね合わせ、誤差を確認しながら緻密に建設を進める。

 プール施設跡地に建設中のプロジェクトでは隣接建物との境界が狭いこともあり、細かな部分まで360度画像を撮影し、そのデータを施主や協力会社と共有しながら合意形成を図っている。設備工事が始まった際には天井裏など部分も撮影し、建設時の収まり確認だけでなく、そのデータを完成後に建物管理にも活用する計画だ。同社は建設段階にとどまらず、維持管理の有効なツールとしてもACCを活用している。

『Takeoff』で見積時間を大幅に削減するWINDOVER Construction(同社HPより転載)



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