【BIMつなぐ新たな潮流⑧】動き出す蓄積データのFM連携 最前線はIoTセンサー活用 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIMつなぐ新たな潮流⑧】動き出す蓄積データのFM連携 最前線はIoTセンサー活用

 設計から施工、維持管理まで一貫してBIMデータを活用する流れは、日本国内でも導入事例が見え始めている。設計と施工を一括で受注するゼネコンではプロジェクトの川上から川下まで一つのデータをつなぐことでフロントローディング(業務の前倒し)効果を発揮させ、各プロセスの手戻りをなくし、円滑な設計の業務効率化や現場運営を実現している。

 これまでは設計と施工の建設段階におけるBIM活用が主流だった。ゼネコンの中には全ての設計施工案件で着工前までにBIMモデルを現場提供する流れを確立している社もあり、最前線の建設現場は主体的にBIMを活用しながら生産性向上を突き詰められるようになった。BIMデータ活用に向けた次のステップとして検討が始まったのが、維持管理段階へのBIMデータ活用だ。

 設計、施工段階にBIMデータを使い、施主との合意形成を進めているゼネコンでは、着工時点からエントランスや各フロアの詳細な完成イメージを施主側に提示しており、施工の進捗(しんちょく)に合わせながら仕上げの詳細を詰めていく社も少なくない。BIMデータは各生産プロセスを通過する中で、関連する情報を付加しながら成長する。蓄積したデータを建物管理のFM領域まで有効利用することで、建設ライフサイクルにつながるBIM活用が成立する。

 大手クラスでは、グループとしての受注戦略として建物運営まで含めたBIM活用に乗り出す動きがある。施工時に積み上げてきた情報の中から維持管理に必要なデータを抜き出し、BIM-FMシステムとして構築しており、既に8プロジェクトの受注実績を持つ社もある。BIM-FM連携によって修繕計画の立案も含め建物運営コストの最適化が実現するほか、膨大な機器類のデータを台帳に連携する作業も効率化できる。

国内でも事例が出てきた BIM-FM連携


 建物ライフサイクルのBIM活用を見据え、オートデスクのクラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud』(ACC)を全面導入する米国建設会社のWINDOVER Constructionは、大学キャンパスプロジェクトでIoT(モノのインターネット)センサーを活用した維持管理に取り組み、着実に採用事例を積み上げている。

 IoTセンサーは温度、湿度、圧力、照度といった環境情報に加え、人やモノの状態を数値データとして収集できる。施設内や設備機器などにセンサーを設置し、そこからの情報を、オートデスクのデジタルツインソリューション『Tandem』に読み込み、建物施設内の状態をリアルタイムにモニタリングする仕組みを独自に開発し、大学側に提供している。

 同社のアマー・ラーファットCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)は「設備機器や備品などのアイテム情報に加え、非常時に備えて緊急連絡先リストや機器マニュアルなども情報としてひも付けており、そこにFMr(ファシリティー・マネジャー)がアクセスして最適な建物管理を進めていく流れになる」と説明する。興味深いのは同社がTandemライセンスを、大学側に無償提供している点だ。これは「顧客への価値提供とともに競争優位性の一環」と明かす。

 BIM先進国の米国では3次元設計が急速に広がっているが、日本を始めアジアや中東ではまだ2次元が主流だ。BIM普及のボトルネックの一つとして建築確認申請がある。2次元図面を前提に制度化されているため、3次元化の波が業界全体に広がっていかないからだ。同社が開発した2次元図面を3次元データに自動変換する技術は、海外でも注目され始めている。

オートデスクのデジタルツインソリューション『Tandem』の考え方



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