【BIM未来図】丹青社(中) 皆で進む「歩み寄り」の流れに/慣れ親しむ解説動画も始動 | 建設通信新聞Digital

5月8日 木曜日

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【BIM未来図】丹青社(中) 皆で進む「歩み寄り」の流れに/慣れ親しむ解説動画も始動

丹青社はBIMの全社展開に向けてデザイン(設計)と制作(施工)の両部門をつなぐハブ機能として、今年2月にバリュープロダクションセンターを発足した。石畑和恵執行役員センター長は「連携による付加価値を導くことがわれわれの役割」と語る。社内ではBIM導入をきっかけに、自発的に勉強会を開くチームも出てくるなど、前向きな流れが広がってきた。「挑戦する意識が、個それぞれの自覚となって発展している」と手応えを口にする。

制作業務もBIMで効率化


まさにオートデスクと結んだ戦略的提携(MOU2.0)はBIMの新たなステージに向けた出発点となる。バリュープロダクションセンターの岡崎勝久デジタルクリエイション統括部長は「MOU1.0から3年を経て、次のステップとしてBIMを軸に関係者が密接に連携する姿を目指していく」と焦点を絞り込む。その基盤にオートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を置き、丹青社独自の運用ガイドラインに沿って、本格的なACCの活用が動き出した。同時に「社内のBIMスキルアップも新たなステージに進んだ」と明かす。

デザイン部門では、プロジェクトを通じてBIMを先導する人材としてBIMコーディネーターを位置付けており、現時点でデザイナーの15%に当たる50人を認定している。20代、30代の若手が中心となり、BIMを浸透させる流れが着実に広がっている。並行して「これからBIMにチャレンジしていこうという人材の育成にも乗り出した」と付け加える。

これまで同社では、BIMスキルアップの一環としてeラーニングを積極的に展開してきた。解説動画は30本を超え、業務の支援ツールとして活用が広がっている。今年2月からはBIMに慣れ親しんでもらうための仕掛けとしての解説動画もスタートした。デジタルクリエイション統括部DX・BIM戦略部BIM・AI戦略課の望月芽衣チーフは「3次元の考え方を理解し、集計表のつくり方など、少しずつBIMを学んでもらえるような構成で展開している」と説明する。既に4本を配信済みで、1年を通して計12本をアップする予定だ。

このように同社がBIMスキル向上のボトムアップに力を注ぐ背景には、22年にオートデスクと結んだMOU1.0を出発点にBIMの導入を推し進める中で「見えてきた課題が深く関係している」と岡崎統括部長は説明する。この3年間で着実にBIMの活用は拡大しているが、現状では先導役が組織を引っ張り、それに皆がついていくような流れになっている。「先行している人たちだけが進んでしまう恐れもあり、それでは組織力に結び付かない。歩み寄り、皆で進んでいく流れを作ることが重要」と先を見据えている。

一方でマネジメントする側もBIMのリテラシーが十分でない課題も浮き彫りになった。BIMに取り組む目的を理解、把握し、それによってどのような価値を導き出していくか。MOU2.0を機にオートデスクが協力する形で、マネジメント層向けのBIMリテラシー教育もスタートする方針だ。

オートデスクの林弘倫テクニカルソリューションエグゼクティブは「ACC上でデータをやりとりするポイントとして、デザイン部門から制作部門にバトンを渡して終わりではない。デザイン側と制作側を伴奏していくような流れをつくることが何より大切であり、そこには組織内のコミュニケーションが強く求められる」と強調する。

BIMをフル活用した「ららぽーと堺」



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